ラオウを目指す羅王のブログ

退かぬ、媚びぬ、省みぬ!我が生涯に一片の悔いなし!!!

日本一赤裸々な野辺山100kmウルトラマラソン日記 その8

time 2014/05/30


59kmのチェックポイントでは、自分の弱さが全面的に侵略してきて危なくリタイヤ受付に駆け込むところだった。

 

がしかし、同じように苦しみ、同じように頑張る仲間たちの姿を見て、少なくとも最初のリタイヤをかますのだけはやめようと思った。

諦めることを諦めた、そんな瞬間だった。

59km〜71km

59kmのチェックポイントである北相木村役場からの出発は、俺はたぶん仲間たちより数分早かったと思う。仲間たちとの会話より、自分の中で絶望的に開きかけた目標と現実とのギャップを埋める方を選んだってこと。

本当は、みんなと話したい誘惑はたっぷりあった。

仙人に、『脚痛いっしょー無理しないでくださいねー』、なんつって。熊に、『血豆大丈夫?間に合わないかもしれないけど、完走だけはしようね』、なんつって。小僧に『いやーこんな時までタバコなんてスゴいわぁ。どうする?どこでリタイヤする?』、なんつって。ハラルに『制限時間に間に合うか間に合わないかは別として、負けた方が鮨オゴることにしようぜ』、なんつって。

外部との同調というのは、最も心に負担の少ない生き方だ。だけどそれは時に、目標の達成からは遠ざかる意思決定にもなりうる。

59km地点での俺は相当弱っていた。リタイヤすら本気で考えていた。そんなときにみんなと話したら、弱音を吐いてしまいそうで、しかもプレゼン力抜群の貫通力ある弱音を吐いてしまいそうで、自分にも仲間にも悪影響を及ぼすであろうことが分かっていた。

仲間は大切だ。だが、大切だからこそ、自分の未達の原因を仲間のせいにしてはならない。胸を張って自分が彼らの仲間として存在するために、今俺がすべきは会話ではなく、回復だ。

だから俺は、皆の姿を横目に見ながら、粛々と一人で回復と決意に努めた。

目標に到達する一番の近道は、目標に焦点を当てることだ。隣を走っている誰かを見ることではない。話しにいくことも、弱音を吐きにいくこともとても簡単なことだったけれど、俺は目標にだけ焦点を当てることにした。

そして、後ろ髪引かれながらも、一人孤独にチェックポイントを出発することにした。(結果的にこの数分早く出たおかげで、制限時間2分前のゴールへとつながった。神は細部に宿る!)

この出発した瞬間から、俺はどこかふっ切れたように思う。ここから先、『もうダメかも』、『間に合わないかも』、『やめちゃおうかな』とは、不思議と一度も思わなかった。

※補足
仲間は大事だ。これに疑問の余地はない。しかし多くの場合、定義を間違えたりしてはいないだろうか。
仲間>目標、となると、妥協が生まれる。これは一見仲良しに見えるが、実のところそれはただの馴れ合いだったりする。仲間が推進力になるどころか、エンジンブレーキになってしまってる例はとても多い。
シビアなようだけれど、逆だ。目標>仲間だ。プロ野球は完全にそういう世界だからこそ、本当のチームワークというものが生まれる。目標を本気で追っていると、同じレベルで競う仲間は本当の意味での仲間になる。言いたいのはそういうことで、なかなかに難しいパラドックスであると思う。なぜなら、仲間を優先すると仲間じゃなくなるからだ。

仙人の背中、小僧の意地、熊との合流

ここから先は、最後の難関である馬越峠に向けて、残存体力を振り絞りつつ、心と身体を調えなければならない。精神的に一番ツラいコースの後半が物理的にも一番ツラいという、コース設計者のナイス過ぎる性格が伺える。

IMG_0037

59kmのチェックポイントを飛び出してしばらくすると、Jo仙人が後ろから追いついてきて声をかけてくれた。

仙人:『最後まで!!!』

俺:『もちろん!!!』

3秒にも満たない会話だったが、俺たちにはこれで十分だった。

Jo仙人はウルトラマラソン2回完走の猛者だが、この日は絶望的に調子が悪かった。元々膝に爆弾を抱えているのだけれど、それが日頃のレースの疲労が積み重なったのか、開始4kmで痛み止めのロキソニンを投入していた。俺と熊よりずっと速いはずなのに、俺と熊になんども抜かされていた。最終的には、用法用量を全く無視した奇跡のロキソニン6錠投入にまで至ったそうだ。

そんな仙人が、先に出たはずの俺に追いつき、そして並走する間もなく俺を追い抜いていく。俺のペースは決して遅くはない。頑張っている方だ。

だけれど、徐々に徐々に、仙人は俺との距離を開けていく。膝、今も絶望的に痛いはずなのに・・・

なんて強さだ。

なんて粘りだ。

こ、この漢・・・底が知れん!!!

・・と、山王工業相手に覚醒した流川楓に興奮する赤木剛憲(スラムダンク29巻ぐらい参照参照)のように、離れ行くJo仙人の背中を見ていた。

その圧倒的な背中を少しでも見ていたくて、及ばないながらも俺はしばらく走ることにした。

今回改めて分かったのは、人間の『限界』なんてものは、60kmも走ればとっくに超えているということ。どんなにペースを抑えて走ったところで、60kmという距離は、『もうダメだ』と100回ぐらい思い知らせるには十分過ぎる距離である。

このときも十二分に限界は超えていた。あと40kmも残ってるのにだぜ?

だけど、だけど、不思議なもんです。

Jo仙人の後ろ姿を見てると、走れるんだなこれが。自分より大変な思いをしてる人が自分より頑張っているという紛れもない事実が、俺にほんのちょっとの力をくれるんだ。

それでもしばらくするとJo仙人の背中が見えなくなって、そのほんのちょっとの力がなくなったとき、俺は久々に後ろを見た。俺は頑張ったはず。限界を超えて走っていたはず。

でも、そこには小僧がいた。

俺がJo仙人の背中を追いかけていたのと同様、もしかして小僧も俺の背中を追っていたのか?

頑張っていたのは自分だけではなかった。限界を超えた状態で脚を前に無理矢理踏み出していたのは俺だけじゃなかった。

普段からチャラチャラしていて、大言壮語に広げた風呂敷はまず確実と言ってよいほど畳まずピロシキばっか食ってるような小僧。チェックポイントではヴァーム片手にタバコを吸って肺を鍛えるという、なんとも真剣味のない雰囲気を醸し出しつつ、数分前に出た俺をしっかりロックオンしていた。

そういえば、確かにフルマラソンは1回しか走ってなかったけど、大雪の中一人で何十kmも走ったり、峠走もきちんとやったり、一人でトレイル出たりと、小僧も努力してたんだな。思わず思った。

こ、この漢・・・底が知れん!!!

しばらく並走した後、小僧とは別れた。二人とも限界状態。休みたいタイミングまで合わせるのは難しい。

大量に水分摂取しているのでトイレを済ますと、今度は熊が追いついてきた。おいおい、血豆潰れてたんじゃなかったのか。

熊はその見た目によらず、平地も上りも下りも、つまり全部結構速く走ることができる。マリオカートのドンキーコングが俯き加減な巨大な背中で爆走する場面を想像してもらえば凡そのイメージとしては正解。

Jo仙人に引っ張ってもらい、その後小僧とも並走した俺に、潰れた血豆を抱えながら追いついてきた熊。

こ、この熊、底が知れん!!!

71kmの咆哮と涙

上りが多くなってきたので、必然的に歩きも多くなる。そして歩きが多くなると、ペースが遅くなる。ペースが遅くなると、ただでさえ遅れ気味のタイムが、もっともっと厳しくなってくる。

ここまで30分以上遅れたタイムは、まったく縮まっていない。

上りはキロ8分で上ることすら厳しく、キロ9分、そして気を抜くとすぐキロ10分になってしまう。これでは、さらに完走ペースとの差は開き、どこかの関門でアウトになってしまう。

馬越峠が近づいてくるにつれ、どんどん険しくなっていく上りは、容赦なく俺の精神と脚を削っていった。もう、無理だ。

結果として、少しでも楽しもうと、熊とゲーム形式で進むことにした。俺が『あそこの電柱まで!』といったら、二人でなんとしてもそこまでは走る。そして少し歩く。熊が『3つ先の電柱まで!』といったら、二人でなんとしてもそこまでは走る。そして少し歩く。以下繰り返し。

そんな単純なゲームだ。

De部の部長と副部長、頑張った。上りでは圧倒的に不利なDe部、地球が俺たちを引き摺り下ろそうとしてくる。ニュートンは残酷で、とんでもない法則を見つけてくれた。

でも、De部、頑張った。

巨大過ぎる目標と問題と肉塊は、因数分解して一口サイズにして頬張るべし

問題解決の基本中の基本だが、いつどこで終わるとも知れない、永遠に続くかに思われる上りを、全体で捉えてしまっては心が折れる。俺たちは、楽しみながら、励まし合いながら、因数分解した坂道を、一口、また一口と口に運んでもしゃもしゃと食べていった。

なんと、坂ではスリムな方々のほぼ誰一人にすら抜かれず、De部二人で抜きまくったように記憶している。

そうして他のランナーが孤独と坂の双方と闘っている間に、俺と熊はいちゃいちゃしながらガンガン上っていった。そうは言っても脚はすぐ止まるし、ほんの少し上ると息も荒くなる。とっくの昔に超えた限界は、すでに限界歴2時間ほどになっていた。

事前の計算では、『71km(71kmレースのゴール地点)のチェックポイントに9時間半で到着できていたら、残りの上りはすべてキロ10分使えて平地でもかなりの時間を使える』となっていたので、9時間半での到着を目指した。

やっと71km地点に着いたとき、『スタートから9時間半』は、とっくの昔に過ぎた後だった。

71km地点には、71kmレースのゴールが設置されている。

『お帰りなさい!』、『あともう少しです!』、『最後ファイトぉ!』

隣を走る71kmランナーには、温かい言葉がかけられる。俺たちへの応援は、『まだあと30kmあるんだ、かわいそうに』とあちらが思ってるであろうことが伝わってくるような、一拍置いたものだった。

71kmのチェックポイントに着いた。ゴールを喜びあってる人がいる。涙を流してる人もいる。

でも俺は、俺たちは、まだ喜べないし、まだ泣けない。

あと29km。知ってる距離だ。

だけど

だけど

だけど

なんでこんなことしなくちゃいけないんだ。

なんでここがゴールじゃないんだ。

なんで

なんで

・・・

あと29kmということは、ここまで7/10は終わったということ。あとちょっとだ。

でも、熊と励まし合いながら、俺は泣いてしまった。泣いている姿を見せたくなくて、『これ、最後までいったら絶対泣けるぜ。最後の最後まで絶対がんばろうなぁばばば・・』と言った最後は、顔をそむけた。

熊には見えていただろうか、俺がツラくて泣いていたのが。

でも、あと29km。あと29kmだ。29?29?肉?俺たちの距離じゃないか!!!!

頑張ろう、あと数時間だ。走ったことのある距離だ。知ってる距離だ。

まだ希望は見えない。だけど確信している。俺たちはゴールできる!必ずできる!

雄叫びを二回あげて、水をぶっかぶって、俺たちは出発することにした。

これからが最後の闘い(とこのときは思っていた)、馬越峠。

俺と熊はがっちり心で握手をして、またゲーム形式で走りだすことにした。

さらば71km地点。絶対に100kmまでたどり着いて、盛大に泣いてやる。

世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

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羅王(AKBとも呼ぶ修羅も多いです)

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「ラオウを目指す羅王のブログ」にようこそ。修羅が蔓延る世紀末の日本を、「北斗剛掌派」という思想体系を以て変える活動をしています。我が生涯に一片の悔いなし!と言える人生を送るため、101回目のダイエットに励んでいます。