ゴール。それは点に過ぎない。しかし、すべての冒険の終着駅。すべての苦労も苦難も、この一点において報われる。
時間は13時間58分、制限時間2分前だった。
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写真 (1)
恥ずかしながら、こんなにスポーツで泣いたのは初めてだ。初めて、『自分の限界をはるかに超えた状態をはるかに超えた』のだ。
こんな顔になれるほど頑張った自分を褒めてあげたい。
***
ゴールしたあとの驚愕
ゴールした瞬間に、怖くなって後ろを振り返る。掲示板の時間が、間違いなく制限時間内であることを確認するためだ。
そしたら、
『小僧だ!!!』
誰かが叫ぶ。
ウソだろ?
87km地点の最後のチェックポイントで、俺と熊が出発するときにようやくたどり着いた小僧。多忙のため、フルマラソン出場はこれまで一回限りで、普段の練習にも事欠くありさまに見えた小僧。普段、風呂敷の拡げっぷりに比してあまりにも畳まないことが多い小僧。
87km地点で会ったときも、その顔は決して希望に満ちあふれていたわけじゃなかった。何より、小僧には俺にとっての熊のような一緒に走るパートナーがいない。ラスト13kmの一番キツいパートを、一人で走りきれたとは考えづらい。
しかし・・・
小僧だ!間違いなくゴールテープを切っている。
俺たちよりも、たったの10秒後ろで、間違いなくゴールテープを切っている。
お前、お前、お前・・・
やりやがったな!!!
やりやがったんだな!!!
***
倒れ込みそうになる小僧を皆で支える。これでもかというほど、皆で抱き合う。兄さん、Jo仙人、熊、俺、小僧、みんなぐちゃぐちゃだ。
汗と涙でぐちゃぐちゃ、抱き合いながらぐちゃぐちゃ。ありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう。
聞けば、小僧は馬越峠を下り始めてから、20kmほどで数百人を抜かしてきたという。ほぼ一度も歩くことなく、ゴールまでたどり着いたという。
なんてヤツだ。なんて根性だ。なんて強さだ。
小僧はこの日、30歳最後の日を迎えていた。明日は31歳になる。その30歳最後の日を、漢として全うして終わらせ、やりきって31歳を迎えたかったのだそうだ。
小僧、間違いなく漢だぜ。最強の漢だぜ。
この日のMVPは、間違いなく小僧だ。
ぐちゃぐちゃに泣いているが、小僧、最高にカッコいいぜ!!!
***
14時間5分の英雄
そして無情にも、時計の針は制限時間の14時間を跨いだ。ここから先は、完走にはなっても記録には残らない。
俺たちは、最後の戦士、ハラルを待った。ダメだったか・・・
 
片付けの関係でゴール付近から追われてしまった俺たちは、ひとまず体育館の近くでハラルを待った。
5分後、フラフラになりながら、ハラルが現れた。
なんて言葉をかければいいか分からない。でも、おつかれさま。
ハラル、ナイスラン!がんばった、お前最高に頑張った!
そんなようなことを言って、抱きしめたように記憶している。
ハラルは、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。気持ちが分かるとは言うまい。惜しかったとも言うまい。結果がすべてと言えば、確かにそれまでだ。
だけど、お前、最高に頑張ったぞ。その涙、最高にカッコいいぞ。
フラフラのハラルを椅子に座らせ、完走のご褒美のそばをハラルに持たせる。
ふとハラルを見ると、ぐちゃぐちゃの顔をさらにぐちゃぐちゃにして、顔を下に向けて泣いていた。涙も鼻水も、ものすごい勢いでそばに流れ込んでいた。
ハラル、泣け。涙が枯れるほど泣け。その悔しさが、お前を大きな漢にする。
『這い上がろう。負けたことがある、というのが、いつか大きな財産になる』
という山王工業堂本監督の名言を思い出した。(スラムダンク31巻参照)
ハラルのゴールタイムは14時間5分。
俺が前日に『前門の虎、肛門の狼』対策でメジャーリーグ級の効き目を誇る『ストッパ』を大量に用意しているのを見て馬鹿にしていたが、思えばこのとき、ハラルにお裾分けをすべきであった。
この日のハラルは肛門の虎に6度も襲われ、その度に列を作って御手洗に並んでいた。軽く1時間は御手洗に費やしていたはずで、それさえなければ間違いなくこの日チームで最も速い漢になっていたはずである。
彼を知り己を知れば百戦危うからず
は有名だが、『おのれ』だけでなく『あなる』も知っていれば、この日のMVPはハラルであったことだろう。
***
ハラルのゴールを見届けた俺は、いの一番に奥さんに電話した。
『おで、おで、おで、完走したじょーーーーーーーーーーーあばばばばぁ!あびがとう!あびがとう!おで、完走でぎた!ぁぁぁぁあああああああ!!!!!』
もはや何を言ったかも思い出せないが、奥さんはテンションの違い過ぎる電話にため息をつきながら一言、
『おめでとう、良かったね』
と言ってくれた。
電話に代わった4歳の娘も、電話口で泣き叫ぶ父親に向かって、
『パパ、へんな声〜、泣いてんの〜?』
と言ってくれた。
君たちのダンナとパパ、頑張ったよ。ありがとう!
***
全員がゴールし、全員がウルトラマンとなった俺たちは、傷ついた身体を休める間もなく、簡単な着替えを済ませ、新宿行きのバスに乗り込んだ。
帰りのバスでは、寝たくても寝られない状況だった。寝るには疲れすぎていた。
でも
疲れすぎて寝られないって、最高。
俺たちは、ウルトラマンになったんだ。
新宿に降り立った俺たちは、忠誠を誓う元帥閣下に敬礼をして、帰路についた。
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***
ウルトラマンの兄弟たちへ
感動とか限界という言葉すら陳腐に思えるほど出し切った野辺山100kmウルトラマラソン。一人で参戦していたらとっくの昔にリタイヤしていたと思う。
この漢たちがいなかったら、絶対に無理だった。
この漢たちがいたから、俺は頑張れた。
心の底から、お礼を言いたい。ありがとう。
しつこいようだが軽く戦友たちを紹介しておく。
兄さん
並走出来たのは最初の5分だけ。俺がストッパ3錠投入にも関わらずOPPで離脱するまでだった。以後は終始安定した走りで、一度も背中を見ることはできなかった。人格はもちろん仕事、家庭、トライアスロン、今回の野辺山とすべてに安定感抜群で、追い込まれた状況でも気配りを常に忘れない。こういう漢、こういう40代になりたいと素直に思える頼れるアニキ。しかし一体、44歳の肉体でどうやってこんなに安定したフィジカルを保てるのか、不思議で仕方ない。俺と熊がゴールするときに大きな声で呼んでくれたのは、本当に嬉しかった。なぜか出身県と自分の名字が同じ。例えて言うなら、幼き頃のケンシロウを救うため、自身の両目を犠牲にした心優しき南斗聖拳の重鎮、シュウ。

Jo仙人
ウルトラ経験2回の猛者で、見た目も中身も解脱気味だが、今回の走りは本当に圧巻だった。開始4kmで古傷の爆弾が爆発し、まさかの超序盤でロキソニン投入。その後、厚生労働省の指示を無視したロキソニン6錠投入で今回のレースを乗り切った。傍目に見てても今回こそは仙人もリタイヤかな、と何度も思ったのだが、60kmからの鬼気迫る走りと背中に、とてつもなく勇気をもらった。ノウハウや心構えを事前にこの人に教えてもらったからこそ、今回完走できた。例えて言うなら、亀仙人からエロとハゲと不真面目さと亀と加齢を除いた感じ。

熊には今回、ありがとうしか言えない。熊がいたから頑張れた。熊がいたから折れた心もなんとかつなぐことができた。熊が吐いたとき、俺が頑張らなきゃと思った。熊が吼えたとき、俺は泣いた。熊が最後に引っ張ってくれて、俺はゴールまでたどり着くことができた。いつもモゴモゴしていて、焼きそばの入ったメロンパンを買ってこいと言ったら真剣に探してきてくれそうな熊。今回、二人でウルトラマンになれたことを本当に誇りに思う。例えて言うなら、スラムダンクは山王工業の不動のセンター、河田の弟である河田マルオ。
小僧
今回のMVP。50km過ぎからは何度も合流し、何度も離れた。正直、87km地点で最後に見かけたときには無理なのかなと思ったが、そこから一度も止まらず数百人抜きをかました。30歳最後の日に伝説を作った走りは間違いなく最優秀選手。今回のレースで一番の感動をくれたのはこの小僧だったかもしれない。そういえば、そもそもこのレースに出ることになったのも、小僧のおかげ(せい)だ。小僧に言いたい。『ふざけんじゃりがとうございました。』例えて言うなら実力のあるウソップ。
ハラル
今回の陰のMVP。不運なOPPによる6回の戦闘さえなければ、間違いなく最速の漢だったことと思う。ハラルには以後、必ずストッパを押し付けることにしよう。ハラルが流した悔し涙を、俺は一生忘れない。本当にカッコいい、戦いを全うした漢の涙だった。自分を変えたいと願うハラルの気持ちは、ものすごくよく分かる。今回の悔しさを胸に、これからハラルがどう飛躍していくのか、楽しみだ。この3日後ぐらいに、かつての上司にかなり上から目線で『ウルトラマンになるコツ』を伝授したというハラルのハートの強さには頭が下がるばかりだ。例えて言うなら、結構あらゆることがねじれの位置。
野辺山の人たち
本当に素晴らしい大会で、今までとは全く別物の世界を見せていただいた。苦しいところで必ず現れるエイド、心のこもった言葉には、何度も何度も救われた。人には人柄があるが、大会にも人柄というのがあることを知った。なんか、とっても温かい大会だった。もちろんこれ以上ないぐらいに厳しかったけど。全体として、愛を感じる大会だった。携わっていただいた方全員に、改めてお礼を言いたい。ありがとうございました。I'll be back!
***
毎度の癖で長々と続いてきたこのエントリも、次で最後となる。最後は、この野辺山で学んだことを改めてまとめて、以後誰かが何かにチャレンジするときに、参考にしてもらえるような内容にしたい。
そして個人的には、それが将来的に娘の勇気になったりするようなことがあれば、とっても嬉しい。
君のパパは頑張ってたんだよ、そして今も頑張ってるんだよ、ということを、伝えたい。
 
世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。
引かぬ媚びぬ省みぬ!
我が人生に一片の悔いなし!
 

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