2019年2月20日
  • 退かぬ、媚びぬ、省みぬ!我が生涯に一片の悔いなし!!!

帰ってきたウルトラマン〜柴又100kmウルトラ列伝その4〜


同志で同じ松坂世代でもあるネバッティと42km地点らへんで残念ながら別れることになり、その後はただひたすら55km地点のチェックポイントを目指した。

55km地点は、このレースの北の折り返し地点であると同時に、事前に用意しておいたドロップバッグの中から後半戦のためのエネルギーを補給する場でもある。

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前回の野辺山よりはだいぶ少なくなったものの、後半に向けてしっかり補給しておきたい。

***

42km〜55km

俺は今回の柴又、タイムはヨユーで、制限時間は気にしなくていいからとにかく完走することだけ心がけようと決めていた。

平坦だし、スピードが落ちる要因ないし。

そしてその作戦は、前半戦であっさり全否定されることになる。野辺山以上に、関門との厳しい戦いを繰り広げることになってしまった。

完全に失態である。手を抜いていないにもかかわらずここまで追い込まれたことに、問題の深刻さがあるように思える。

50km地点では、なんと6時間46分もかかってしまっていた。約7時間だ。

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半分で約7時間かかったということは、もう半分も同様にかかると見ていい。しかも、前半の50kmより後半の50kmの方が段違いにキツい。ペースは落ちるに決まってる。

この時点で暑さのあまり計算はほとんど出来なくなっていたが、とにかく前半より速いペースを心がけないと、14時間という制限時間はクリア出来ないという結構辛辣な事実に突き当たってしまったことだけは理解した。55kmのチェックポイントで20分ぐらい休むことも計算に入れなければならない。

ああ、ヤバい。ヤバすぎる。

またこれだ。制限時間数分前の攻防だ。

もうイヤだ。でもまたこれだ。

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さて、懸命な読者の皆さんには、一つ疑問がおありだと思う。

『てかさ、なんで毎回ギリギリなの?もっと余裕持ちなよ。』

ごもっともである。俺だってそう思っている。そして俺は明確に答えを持っている。少しシェアしたい。

理由は主に二つある。

一つ目は、単純な走力不足。ゆうても、走り始めたのが2013年9月。このときは初めての10km走で足腰が立たなくなって師匠である元帥閣下に文句を言い、初めての20km走でツラさのあまり涙した。

そこから2013年11月の初マラソン。2014年1月、3月、4月のフルマラソン。5月の野辺山ウルトラマラソンとステージを駆け上がってきたが、所詮はサンデーランナー。

ノリでウルトラに出ているだけで、まだその走力はない。14時間という時間制限は誠に絶妙に出来ていて、ギリギリのランナーがギリギリ体力気力を絞り出し尽くして、ギリギリ完走出来るか出来ないかというラインに設定されている。

だから、俺程度の走力でウルトラマラソンに出ている時点で、ギリギリとの戦いだということはある程度織り込んでいなければならない。

***

もう一つの理由としては『パーキンソンの第一第二法則』に俺が侵されているからだ。

定義としてはこういう法則だ。曰く、

『仕事量は、与えられた時間を使い切るまで膨張する』
(残業しても残業しなくても成果は限りなく一緒ということ。政府において、官僚が増えればその者たちに与えるべき仕事が増え、仕事が増えればそれを処理する官僚が増え、それによって増えた官僚に暇をさせないために仕事が増え・・・となることを問題視しての格言)

『支出は収入の額と一致するまで増大する』
(同じく政府系の話。官僚が予算を取ると、その予算を使い切るまで、合理性と必要性の仮面を被った予算費消項目が並ぶってこと。ないならないなりに、あるならあるなりにお金はどこかへ飛んでいく。公共事業とかにありがち。)

これをウルトラマラソンに応用すると、『もし制限時間が13時間なら13時間でなんとか走れるのに、14時間あると14時間使って走ってしまう』ということが言える。

実際は13時間で走れるかは現時点では甚だ疑問だが、たぶんそれならそれで真剣につじつまをあわせようとするのだろう。で、たぶんギリギリなんとかすると思う。

14時間あるから、14時間みっちり使ってしまう。夏休みの宿題のスタートが、必ず8月30日頃からになるのと理屈は同じだ。期限のない仕事はいつまで経っても仕上がらないし、ほとんどの人間は期限の直前にならないと、何もしないのである。
(うちの奥さんは期限があると必ずかなり前に仕上げる。こういうところはスゴいと思う。俺は自堕落なので無理。夏休みの宿題は9月に入ってから始める方。しかも先生の顔色を見ながら、『やらなくても良い宿題』を探し出して削っていく方。)

このパーキンソンの法則病は俺のクリティカルな弱点の一つで、これから時間をかけて解決していかないといけない部分だが、一応解決法は分かっている。これはまた別の機会に書きたいと思う。

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イマイチ過ぎるチェックポイントとサヨナラバス

50kmを過ぎたあたりで、『キャプテン』や『モンタさん(仮)』などの強豪ランナーとすれ違うことが出来た。

どちらも不惑オーバーにして3時間20分を軽く切る凄腕で、しかしキャプテンとは2回ぐらいしか会ったことがなく、モンタさん(仮)に至ってはこの日の朝に初めて会った。

そんな二人だが、どちらも力強くハイタッチしてくれて、そして改めて完走を誓うことができた。

こういう激しいレースに出ていると、1度や2度しか会ったことがない人でも、数年数十年の知り合いよりも強い絆を感じてしまうことがままある。

時間は関係ない。密度と温度と湿度である。

リスペクトする二人にパワーをもらい、しかし大きく力の劣る自分に合ったペースで、俺は淡々と走り続けた。

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55kmのエイドが近づいてきた。あと数キロというところで、折返してきた同志のザックにも会うことができた。

ザックは去年、45km地点でリタイヤしている。今年の彼は既に、55km地点を超えて、しかも気力十分な顔をしている。

『必ず完走するぞ!』

ペースははるかに遅いくせに先輩風を吹かせたかったのか、俺はザックにそう叫んだ。

『もちろん!』ザックは大声で返してきた。

この先ツラ過ぎてツラ過ぎてやめようと何度も思ったのだが、それでも背中を支えてくれた大きなパワーのうちの一つを、ザックからもらった。ありがとう。

***

ついに55kmチェックポイントが近づいてきた。

折り返しを数度繰り返し、チェックポイントの広場へ入っていく。

ん?

ン?

あれれ?

おっきなバスがあるぞ?

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とても豪華だ。とても涼しそうだ。とても快適そうだ。

そう、これが、

『サヨナラバス』

である。あのゆずが歌っていたアレである。

よく見ると、サヨナラバスは何台も何台も置いてある。そして至るところで、

『リタイヤの方はこちらです!!!乗り込んでお待ち下さい!!!』

と係の人が叫んでいる。

あと関門まで何分あるか、あとどれだけのペースで走れば間に合うか、といったアナウンスは、皆無。

ただただ、リタイヤを勧めてくる。まるであらゆる選択肢の中でリタイヤが最上の選択であるかのように。リタイヤしないヤツは非国民だとでも言いたげな感じで。

***

これには参った。本当に参った。何をどう合理的に考えても、ここで戦いを止めておとなしくバスに乗るのが正解に思えてくる。

55kmを炎天下で7時間以上かけて走るということは、その勝負になぜ自分が挑んだのか、なぜこの戦いに価値があるのかなどの基本的な問いを忘れさせるだけの疲労を伴う。

俺はフラフラとバスに引き寄せられ・・・

・・・

・・・

なかった!!!!!

実は、事前に昨年のリタイヤで悔しい経験をしたザックから話を聞いていた。『折り返し地点にリタイヤする人用のバスがあるので注意してください』

ビジネスにおいて情報は勝ち負けを左右するが、単なる体力比べに思えるこういったレースでも、情報は結果を大きく左右する。

このザックの一言で、俺の心の中にはきちんとした免疫が付いていた。そして、おかげでサヨナラバスを見ても、乗りたいとは思っても、乗ろうとはしなかった。

またしてもザックに救われた。ありがとう。

***

広場では、今までのどのエイドより多くの地元中高生が俺たちを出迎えてくれた。

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うどん、きゅうり、スイカ、ドリンク、そして何より、『がんばってくださーい!!!』のかけ声。

パワーと栄養を沢山もらって、休憩に入ることができた。

しかし困ったことが起きた。関門は14時21分(レース開始から8時間21分)という中途半端な時間で閉まるが、その『関門』がどの地点を言っているのか分からない。

休憩する広場に入った時点でOKなのか、どこかに関門測定器があったのか、それとも関門を出ないと行けないのか。

その辺の人に聞いても、インド人と同じで返ってくる答えがまちまちだ。

みんながっつり荷物を広げて休んでいるし、状況証拠からするに、たぶんこの広場に入った時点でOKなのだろう。周りの人もどうやらそうだと確信している様子。

***

が、違った。荷物をさんざん広げて、酷使した筋肉をほぐし、さぁこれから休むぞというときに、

『はい、あと3分で関門閉めまーす!』と、おっさんが言いに来た。拡声器のような大きなアナウンスでなく、ひょこひょこ歩いてきたおっさんがだ。

『関門って、まさかあそこの入り口のことじゃないですよね?あれって、くぐった時点でOKなんですよね?』と聞いたら、

『いや、この広場自体を出ないとダメです。ダメ。』とのこと。

それを早く言ってくれ!!!!!

会場皆が面食らったと思う。混乱していたと思う。

みんな何がなんだか分からないまま荷物を大急ぎで片付け、

『はいあと2分〜、90秒〜』

と無情にも告知されるカウントダウンを聞きながら、休憩もままならずに走りだしていく。

柴又ウルトラは開催自体が2回目の大会だ。前回も補給が不十分など相当にクレームがあったと聞いている。そして今回もこういう運営ミスがある。こういう告知は最低20分前にはすべきだ。

ボランティアの方々には頭が下がる思いだが、一方でこういった運営のほころびにもうろたえずに粛々と対応しなければいけないのもウルトラマラソンの一つの醍醐味?だ。

『はいあと10秒!』

俺は死にそうになりながら、残り10秒で『55kmの関門』を通過した。危ない。危なすぎる。

羊の群れに狼が現れたように、皆混乱している。あまりの理不尽さに、間に合わなかった人も相当数いたように思う。

人は諦めるとき、適度に合理的で適度に自分が傷つかない言い訳を探すものである。こういうトラブルの一つ一つが、ある意味勉強になる。

俺は諦めていなかったので、もちろん出走することにした。

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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

引かぬ媚びぬ省みぬ!

我が人生に一片の悔いなし!

 

 

コメント一覧

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