僕は大学生時代、テニスサークルに属していました。女の子ときゃっきゃっとできるかと思って手ぐすね引いてたのですが、そこはインターハイ出場者が闊歩する世界で、かなりのガチサークルでした。
最後は準レギュラー、すなわち補欠状態だったのですが、そんなときの団体戦で興味深い出来事があったのを最近思い出しました。
少しイタい話を。
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初心者の何気ない一言

その試合は団体戦で、一応学内トップのサークルだった僕のチームは、全員マジで応援。皆さんがイメージするテニスのマジな試合というと、錦織くんに代表されるように、激しい打ち合い、全力のフットワーク、とんでもないフィニッシュショットの応酬という感じかもしれません。
確かに体育会レベルだとそうなることもあるのですが、サークルレベルだと、トップチームでもそうはなりません。特にシングルスはニシコリならぬ『シコり合戦』といって、回転をかけた山なりのボールを打ちあって、相手のミスをどこまでも待つということを何時間も続けることが多くあります。
こうなると、一つのラリーに5分かかるということもあったりします。ボール自体も、ネットの5m上を通過するようなかなりスローボールとなります。
さてそんな試合の最中に、応援で見ていたテニス初心者の同級生が、こんなことを言いました。
『おそいなー、あれぐらいなら、オレでも打てるぜ』
当時はなんとも思いませんでしたし、同意すらしてましたが、今なら間違いなく、
『このうつけ者が!!』
と恫喝します。
たしかに、そのとき目の前で両チームのレギュラーの選手が打っていたのは、初心者の彼でも打てるような威力のボールでした。適度なスピン、適度なスピード、適度な山なり感。ちょっとコツさえ掴めば、誰でも打てるボールです。勿論、当時の僕はその何倍も速いボールを打てました。
ただ、ではその初心者の彼や、当時の僕がレギュラーの選手に勝てるかというと、絶対にそんなことはありませんでした。良い勝負どころか、圧敗。一度も勝てませんでした。
試合と同じ威力のボールを打つ事はできる。でも勝てない。これは何だったのだろうか。最近やっと答えが分かりました。
 

答えは、簡単な分数だった

僕が仕事で後輩に教えていることと、当時僕が頭を悩ませながら結局レギュラーの選手に勝てなかったことと、初心者の同級生が何気なく放った一言というのは、実は一本の線でつながっていたのです。
答えは、簡単な分数で表現できる程度の真理でした。
レギュラーの選手が試合で見せていたのは、彼らの実力が『10』としたときに、その1/10の『1』でした。練習と試合では全てが違います。空気感、プレッシャー、試合結果の影響。
『練習では出来るのに本番だと出来ない』みたいなことは誰しもが経験しますが、レギュラーの選手とてそれは一緒。だからよく見ると、彼らが試合で『1』のチカラしか出せてないとすると、実力そのものは『10』あると考えなければいけなかったのです。
ですが、初心者の同級生はそうは考えません。
目の前に見える『1』のラリーの応酬を見て、『1』の実力の持ち主である彼は、
『ああ、あれなら俺にもできるわ。。。』
と思ったのです。別に彼が調子に乗っているわけではありません。自分が『1』で、目の前に『1』が展開されていたとしたら、それをイコールと思うのは当たり前です。
ほんとは違うんだよ、ということを、今なら言えます。でも当時は僕にも分かりませんでした。
そう、繰り返しになりますが、『10』の実力があって初めて『1』が出せます。もし『10』のラリーがしたければ、『100』の実力をつけねばなりません。『100』のプレーを見せて魅せたければ、『1000』の実力をつけるためのトレーニングをしなければなりません。
テレビで見てもとんでもない試合に見える錦織くんらトッププレイヤーが、どれだけすさまじい実力を持っているか、なんとなく分かりますでしょうか。
 
実は会社のトップセールスの先輩方と同行すると、商談の様子も話してる内容も、『至ってフツー』なことが往々にしてあります。毎度思います。『俺にもできるな。。。』
そしてご想像の通り、全くできません。
先輩と同じトークが出来るか出来ないかと言えば、それは僕にも出来ます。しかし、それをある特定の場面で出すことを選択するために、お客様の状況、タイミング、呼吸などの全てを見極めた上で、最善の一手として『至ってフツー』の情報を提供するということは、僕には出来ません。
先輩の『10』のうちの『1』を見て、僕の実力である『1』と同じであると勘違いしてしまった僕のピエロっぷり、分かりますでしょうか。
そんな話。
上級者同士の戦いは、テニスであれ囲碁であれ仕事であれ、時にとても単純に、簡単に見えますが、それはかなりヤバい解釈であるということだけは知っておきましょう。
イタすぎます。『1』の実力で外でないようにね。恥かくだけ。
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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!

我が人生に一片の悔いなし!!!

 

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