ドラクエと人生の決定的な違い #787


 

一時期ネットで有名になった「ドラクエ人生論」。一部抜粋すると、

▼レベル1の時から住んでる町から出ないで良いのか?

▼快適な生活を送っているのは、スライムばっかり倒してるからだろ。

▼仕事を頼まれたら、お城の王様に用事を頼まれたと思え。そのプロジェクトの成果が、次の冒険を決める。

▼悪い魔物を倒して町を救ったら、ヒーローになってちやほやされるかもしれない。しかし、その町を去れ。

▼もし強い敵にやられても、教会からやりなおすだけだ。お金はなくなるが、経験は残っている。

素晴らしい喩え!一つ一つが本当に深く、ぐぅの音も出ない。他にも心にビシバシと響く表現が多く、この人ほんとに凄い人なんやなーと、このエントリ1つ読んでもよくわかる。

なんて話を交えながら昨日旅館の後継者の方に対してコンサルティング的なことをしてたんだけれど、話しながらよくよく考えてたら、この素晴らしいメタファーにも一つだけ現実と大きく違う点があることに気づいた。今日はその点について。

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ドラクエにしろFF(ファイナルファンタジー)にしろ、RPG(=ロールプレイングゲーム)では、当初ショボかった主人公が当初はショボい敵を、そしてだんだん強敵を、最後はラスボスを倒して世界を平和にするという点では同じ。

レベルが上がるとパワーやスピード、使える呪文や魔法の数が増えていき、経験値と持ち金の上昇とともに飛躍的に強くなっていく。

これはドラクエ人生論にある通り、人生そのものにも当てはまるストーリーだ。僕自身、小さい頃は補助輪付きの小さい自転車にしか乗れなかったが、今ではトライアスロン専用バイクにのり、180kmを走破し、たまに時速60〜70kmぐらい出すこともできるようになった。

が、RPGゲームと人生でココだけは所与の条件が全く違う、という点がある。それは、

RPGゲームでは時間は無限。人生では時間は有限。

という圧倒的に当たり前な事実だ。

例えばドラクエ。魔王を倒すのに不安があれば、徹底的に敵と戦いまくり、経験値とお金を貯めることができる。レベルは99(=最強)、主人公の装備は「勇者の剣」、「勇者の盾」、「勇者の鎧」、「勇者の兜」とフルコース。魔法も全部使える。そんな状態までもっていけば万全だ。

仲間も含めて同じように強化できていれば、これで魔王に負けろという方が難しい。ちなみにレベルを99まであげようとすると、最後の方はレベルを1上げるだけでも丸2日かかったりする。レベルを0〜85ぐらいまで上げたときの経験値の総量と同じぐらいの経験値を、98から99のわずか1レベル上げるのに必要とする。RPGではこれができる。

でも人生でこれをやろうとすると、レベルが60を超えた当たりから高齢化が始まる。経験を積めば積むほど、その人間は成長していく。若い頃はそれでいい。しかしある一定年齢を超えると、成長ではなく成熟に局面が移行する。そしてさらに一定年齢を超えると、衰退していく。RPGでレベル99になる頃には、本人の年齢が99歳になってたりする。知識や経験は素晴らしいものをもっていても、体力や回転に問題がありすぎてパフォーマンスの面で30歳の人間に勝てないなんてことはよくある。

人生では現実的に、レベルが40になったぐらいで魔王の城に突っ込まねばならない。それ以上遅くなると、今度は魔王ではなく加齢という波に勝てなくなるからだ。あるいは他の勇者がもっと低いレベルのまま突っ込み、魔王を倒して世界を平和にしてしまうからだ。装備も、剣は「勇者の剣」を攻撃を重視して準備、鎧は命を守るために「勇者の鎧」を準備出来たとして、しかし盾はお金が足りず「青銅の盾」になるかもしれないし、兜は「ユニクロの帽子」になるかもしれない。

勝つことは絶対的に必要であるものの、そのための戦力としては装備も経験値も全てを揃えられるわけではないのだ。ココだけは絶対に揃えないと勝てない、でもココはちょっと不完全でもしゃーない、そういう見極めをきちんと出来た人にしか、魔王と戦う資格はない。逆に言えば、「まだ装備が・・・」、「まだ魔法の種類が・・・」、「まだレベルが・・・」と言っている人は、RPGの世界では許されても、現実の世界では役立たずの烙印を押される。

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囲碁でこの現象は「手抜き」と呼ばれる。相手が打ってきた手が近視眼的なものであれば無視し、もっと大事なところに手を回す。初級者が5個石を使って守るところを、上級者であればわずか2個の石で守りを済ませ、残った3個は全て攻撃に回す。

先日、ディズニーランドのごはん事情についてボコボコに言ったけれど、まさにコレ。ディズニーランドもごはんに関して「手抜き」をしまくっているが、勇者も現実の世界ではうまく「手抜き」をしないといけない。

装備で外せないポイントはどこか?逆にユニクロで済ませても良い部分はどこか?絶対に覚えなければいけない魔法はなにか?あってもなくても変わらないから別に覚える労力を注ぐ必要もない呪文はどれか?経験値が増える分には良いけれど、出来ればレベル45(=45歳)までに魔王の城に攻めこみはじめ、レベル65(=65歳)までに世界を平和にして、引退して退職金をもらいたい。

時間が有限であるということは、どれだけ「手抜き」が上手かという点に結構な比重がかかっていると言って良い。

チームにおける一試合あたりの走行距離が抜群に高い元日本代表の遠藤選手やドルトムントの香川選手も、よく見れば必要のない時間帯には結構歩いている。全部の局面で走っていたら、どんな選手でも潰れてしまう。いわんや一般人の勇者をやだ。

高級品に身を包んでいる本田選手も、見えないパンツはユニクロだったりするんじゃないかと思う。

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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!

我が人生に一片の悔いなし!!!