今夜はBeat it #820


 

「ンヒュッァア!!!」

声にならない声で嗚咽を漏らした瞬間だった。

漏らさないために駆け込んだトイレで思わず漏らした声。

「人生には三つの坂がある。神楽坂、乃木坂、まさか」と、東郷平八郎は迫り来るバルチック艦隊を眼前にして、落ち着いた面持ちで幕僚達に対してそう言い放ったという。

まさにその「まさか」が訪れて瞬間だった。

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プロボクサーが倒れるのは、どんなパンチが飛んできたときか皆さんは知ってるだろうか?

ヘビー級のボクサーになると、そのパンチ力はの衝撃は400kgを越える。車と衝突するのとそう変わらない衝撃が首にかかるわけである。

しかしそれでも彼らは倒れない。鍛え抜かれたカラダ、異様な速さのウィービングやダッキング、志々雄真の腹心・瀬田宗次郎もびっくりの縮地のようなフットワークを駆使して、巧妙にパンチのダメージを芯からズラすようにしている。

また、来ることが分かっているパンチであれば、首を固くして歯を食いしばって、常人には不可能な衝撃に耐えるのがプロボクサー。

しかし彼らにも、倒れる瞬間がある。その多くは、「予測してない普通のパンチ」や、「普通の威力の見えないパンチ」を食らったときだ。必殺ワザのような仰々しいパンチではなく、そういった普通のパンチを視界に捉えられないまま食らったときこそ、KO率は飛躍的に上がる。

僕が食らったのも、そんな「見えない普通のパンチ」だった。

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何が起きたか。自分が何をしてしまったのかはすぐに分かった。

どうやら、普段縁のない、「ビデ」ボタンを押してしまったようだった。

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僕は普段、ウォシュレットも使わない。なにかこう、開けてはいけない扉を開けてしまうような錯覚に陥るからだ。決して知ってはいけないエデンが広がっているような気がして、自重していた。加えて、どうも衛生的にいかがなものなのかという疑念が頭から離れない。

この日も、ウォシュレットを使う予定などなかった。が、本を読みながら体勢を変えた瞬間に、ヒジでビデボタンを押してしまっていたようだった。

「ンヒュッァア!!!」

と第一声は動揺してしまったが、僕はラオウを目指す漢。すぐに冷静さを取り戻し、ひとりごちた。

 

 

「違う、そこじゃない。」

 

 

頭のなかには鈴木雅之が流れていた。

肛門を水責めされるならまだしも、何もない中立地帯を攻めるとはいかがなものか。世界情勢的に言えば、宣戦布告なしにスイスやスウェーデンやチベットのような中立国をいきなり攻めるようなものだ。かの国ですら試みない、暴虐以外の何物でもない。

あとで調べたら、ビデが攻めてきた中立地帯は、「アリノトワタリ」と呼ばれているらしかった。中学2年のときにクラスメートが連呼していたのはこのことだったのか、と今更ながらに理解した。

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さて、一つだけお願いがある。

以上を踏まえた上で、世界的な名曲、’Beat it’(日本名:今夜はBeat it)を聞いてみてほしい。サビが違う単語にしか聞こえない。

ボキャブラ天国にも空耳アワーにも一度も出てきたことがないので、なんで日本国民はこんなことに気づかないんだろうと、中学3年のときから思っていた。

今僕は35歳。「不惑」までに惑わない人間になりたい。

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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!

我が人生に一片の悔いなし!!!