その漢は、突然連絡してきた。
「羅王さんにお会いしたいです!!!」
なにやらやたら熱心に見えたので、僕ごときに会って得るものがあるかどうかは非常に微妙なところだが、とりあえずOKという返事をした。で、たまたま直近の月曜が空いていたので、その時間を勝手に指定させてもらった。
「もちろん大丈夫です!!!楽しみにしてます!!!」
漢は狂喜していた。いやちょっと待ってくれ。期待値上げないでくれ。ハウステンボスみたいに、実際に会ってみたらがっかり名所みたいだったなんて言われたら、目も当てられない。
***
月曜日。その漢は僕の前に現れた。言っちゃ失礼だが、写真のナヨった雰囲気とは違って、小柄なゴリラが動物園から逃げ出してきた感満載な風貌だった。「ドラゴンボール」で言えば、髪のある小柄なナッパといったところだろうか。
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実は僕は、その漢と会うのをちょっと楽しみにしていた。メールをもらったときは、「どうしたらわからないんですぅ」系の世迷い羊の一種かと思ってたが、ブログのプロフィールを見て目を疑った。
▼大学生まではごく普通の日本人だった。
▼が、突然思い立って柔道二段を取得
▼その柔道二段の免状を持ってザンビアに柔道を教えにいった。
▼その後、日本の教員試験に規格外過ぎて落ちた。
▼その後、マレーシアに移住して日本語学校の先生をやった。
▼その後、ラオスだかカンボジアだかで、いきなりとある事業の事務所立ち上げをやった。
▼その後、日本の教員試験に前回以上に規格外過ぎてまた落ちた。
▼その後、フラれまくった女性にストーカーまがいのラブレターを送りマクリマクリスティ、ついにゴールイン
▼その後、事業立ち上げをやった会社を退職し、広島で3ヶ月間だけ教員をやる予定
一貫して一貫性がないという、意味の分からない経歴。
話も二転三転どころか五転六転するし、しゃべってる内容のほとんどは意味が分からない。魔法のしつもん力を発揮し、「どうしてそれをやろうと思ったんですか?」と聞いてみても、返ってくる答えが要領を得ないことおびただしい。
僕は思った。

アンタ、一体なんなんだ!!!

***
人の思考も行動も、知らず知らずのうちに固まってくる。本当の知らず知らずのうちに。自由な発想をしているつもりでも、気づくとある基準に従って、あるいはあるルール、ある枠内に基づいてしか考えることが出来なくなってくる。
ある同僚は、本人曰くとても自由な発想をしているという。確かに見た目は自由な人間に見える。
彼は一時期「はなまるうどん」にいきまくっていた。自由な発想を標榜する彼のランチの選択肢は、金があるときは「坦々うどん」か「酸辣湯うどん」、金がないときは「小うどん2玉」か「中うどん」というかなり自由度の高いものだった。
しかし外から見て分かる通り、ランチに「パスタを食べる」とか、「天丼を食べる」という選択肢はいつのまにか消えていたようだった。自由だと思っていたら、いつのまにか不自由になっていた。
別に、自由な発想が正しいとは思わない。狭く深い思考が、広く浅い思考を凌駕することだってある。しかし、それだけではいずれ限界が来る。人生で壁にぶちあたったとき、それまでの経験にない発想が求められることが、結構ある。
そしてその発想は、過去をどれだけ振り返っても出てこない。経験したことがないことは考えられないし、知らないことはイメージ出来ない。
***
だからこそ、こういう「ワケの分からんヤツ」にたまに会うのを習慣化することをオススメしたい。
本当に、ワケが分からない。しゃべってる内容も外国語にしか聞こえない。ザンビア人には見えなかったが、少なくとも普通の日本人ではなくなってしまったようだった。目がキラキラしすぎてて、遮光メガネをかけたくなるぐらいだった。
こういう人間に会うと、自分が知らず知らずのうちに前提条件としていたものとか、思考にハメていた枠が、ぶっ壊されてフラットな状態でモノを考えることが出来るようになる。なんなら、
「働くことって、正しいんだろうか?」、「生きるってなんだろうか?」
といったような、家族持ちとしては行ってはいけない方向に思考が一瞬傾く。
出す結論は、前とそう変わるものではない。しかしそれは、一旦自分の思考が全ての前提条件を無視して地球を一周回ってきた分、強固な信念に支えられたものに進化している。
自分のなかだけで、自分との対話だけでここまでの結論に至れるかというと、それは甚だ疑問だ。やはり僕も知らず知らずのうちに、結構頑丈な枠のなかでしかモノを考えられなくなっている。
てわけで、ゴリラ然とした漢は、一人でしゃべって一人で笑って、そして一人でウホウホしながら何かを決意して、そして去っていった。
よく分からない漢だった。また逢いたいと思ったことだけは確かだ。
***

世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!

我が人生に一片の悔いなし!!!

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