下を見る技術 #850


 

「比較はいけない。」、「自分らしさが重要。人は重要ではない。」、「比較する人は、自分に自信がない人だ。」

そんなことがよく言われている。

そのとーりだと思う。

自分と他人は違うし、何か一つのモノサシで比べて測れるものでもない。だし、いつも他人と比べてばっかりいたら疲れてしまう。他人ではなく自分の人生を生きよう、というのも、うなずける主張だ。

がしかし、包丁が人殺しに使ったらダメだけどモノを切るのに使ったら超有用なのと一緒で、他人との比較も、使いようによっては人生を生き抜く上で重宝するスキルになると僕は考えている。

***

全然話は変わり、僕は「一般的基準で言えば相当恵まれてるのにメンタルをやられる人」に大して、正直あまり良い印象を持っていない。

逃げ場のないブラック企業で残業200時間が継続したのち心をやられたとか、悪意に満ちた集団でハブにされ続けたとか、子どもが重度の障がい者で通常「子どもは思い通りにならない」という一般見解の100倍以上思い通りにならなかったりコミュニケーションが取れないといった境遇の人が、「メンタルをやられる」というのはよく分かる。

そんな境遇でもそれを乗り越えてきて、ビジネス上の成果も出しているほんの少数の人たちを取り上げて、「ほら、出来てる人がいるんだから。」とはあまり思わない。

しかし、「あなた恵まれてますよね。」、「少なくともそんなにキツい境遇じゃないよね。」、「一般的に人が欲しがるもの全部持ってるよね。」という人たちに関しては、その人がメンタルをやられるということに対して正直懐疑的だ。

個人差があると言われればそれまでだけれど、「メンタルを病む資格」というのも存在すると思う。そしてそういう資格のない、つまりはごく一般的な恵まれた生活を出来ている人たちに欠けているのは、「下を見る技術」であると思う次第。その技術を磨かないまま、些細なことに心を痛めて勝手に暗黒面に堕ちていくのは、言葉を選ばず言えばいい迷惑だと僕は感じている。

恵まれてんだから、自分でなんとかしろよ、と思う。少なくとも食糧事情と安全事情にほぼ困っていない日本人は、大半のアフリカ難民やアラブ難民より幸せなはずだ。
***

歴史を振り返れば、人々のメンタルの安定のために仕組みとして「下を見る」ことを提供してきたのが支配者層のしてきたこと。

江戸時代は士農工商の下に有名な2つの身分を作って、搾取されがちな農民たちの人心安定を図った。奴隷貿易の要点は、奴隷として連れてきた人たちを、それより少しだけ身分を高く設定した別の奴隷たちに管理させることだった。管理側になった奴隷たちは、宗主国に対して反抗することはしなかった。

どちらもあってはならないこと、起きてはならないこと、やってはならないことを支配者側がした黒歴史ではあるものの、人間の精神構造を理解する上では一つの教訓になると考えている。

人は、自分よりキツい境遇に暮らし、ツラい条件で働く人たちがいることを知ると、自分の状況に対して少しだけ「ああ、まだマシだ。もうちょい頑張るか。」と思える生き物のようだ。

今の時代と比べてはるかに過酷な暮らしをしていた人たちですらそう思うことが出来た。食べ物も水も安全も空気も揃っている今の日本で、それが出来ないはずはないと僕は思っている。

***

だから、すぐにテンパる人たちに向けて言いたい。ちょっと強めに言いたい。

「良い意味で下を見ろ。」

自分より少ない収入でやりくりしている人は沢山いる。

自分より労働時間が多くても溌剌と働いてる人たちはゴロゴロいる。

自分は子ども2人でテンパってるが、子ども5人を育てながら働いてる人もたまにいる。

自分よりカラダが弱くて、それでも耐えながら必死に頑張ってる人は結構いる。

自分ちより奥さんが厳しくて、こづかいも少ないのに高い成果を挙げている教官もいる。

下を正しく見る技術を培えば、メンタルは容易には凹まない。見下すとか侮蔑するとかそういう不健全な目的のために下を見るのではない。あくまでも、自分のメンタルを安定させ、活力を有無ために、手で触れば切れる包丁を料理のために使うのである。

***

なお、「調子に乗る」人の処方箋も、以上を真逆にすれば提案できる。

「良い意味で上を見ろ」となる。

自分よりも少ない労働時間で倍以上稼いでる人はいる。

自分よりも若くてより大きな責任を負ってる人もいる。

自分より細くても強いヤツがいる。

自分よりかっこわるいのに美人と付き合いまくってる友人がいる。

そんなヤツらに勝ってない自分はまだまだだ。

ぐらいのことは考えることができる。正しく上を見る技術を身につけていれば、調子に乗ることなんてほとんどない。

比較も善し悪しであり、結局のところ、それを使う人間のモラルと技量に左右されるのである。

***

世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!

我が人生に一片の悔いなし!!!