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「はじめの一歩」の幕之内一歩は現実的に存在し得るが、「スラムダンク」の桜木花道は現実的に存在し得ないと思う話 #933

time 2016/03/31


 

そもそもがフィクションである漫画に対してリアリティを求めるなと言われればそれまでの話なんだけど、僕は「はじめの一歩」の幕之内一歩は存在し得ても、「スラムダンク」の桜木花道は存在し得ないと前々から思っているんだよという話をしたい。

ご存知ない方のために、簡単に両方のストーリーをば。

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「はじめの一歩」「少年マガジン」で15年以上連載中の、単行本100巻を超えるモンスターボクシング漫画

主人公幕之内一歩は、高校生の時に母子家庭な上にいじめられていたが、とあるきっかけで見たマイク・タイソンのど迫力の映像を見て、ボクシングジムに通うことを決意する。当初はいじめられ続けたマイナス気質や、イマイチすぎる運動神経や運動センスから、すぐに辞めると思われていた。

その後、素晴らしいジムの先輩や生涯のライバル宮田、一歩の隠れた才能(異様に不器用な割に、他に類を見ないほど怪力かつ下半身が強い)を見出した師匠との出逢いを経て、なんだかんだあってプロボクサーになり、なんだかんだあって怪力を生かして日本チャンピオンになり、なんだかんだあって世界タイトルマッチ直前まで行って負けてリハビリ中←イマココ。

 

「スタムダンク」:言わずと知れた、ジャンプ黄金世代がその出逢いを生涯の誇りとするバスケットボール漫画。

地元で有名な赤い髪の不良、桜木花道は、高校入学と同時に一目惚れした晴子のために、晴子が好きだというバスケ部に入部。そこで生涯のライバル流川楓に出逢う。流川を好きな晴子を振り向かせるために、バスケに命をかける。

持ち前の運動神経とスタミナ、そして全国トップレベルのジャンプ力を生かし、あれよあれよという間に実力をつけた花道は、あれよあれよという間に所属する湘北高校にとって欠かせないリバウンドマンとなっていく。

その後あれよあれよという間にインターハイまでたどり着き、最後はあれよあれよという間に高校バスケ界の絶対王者、山王工業をラスト1秒、1点差をひっくり返して葬り去った。ド素人花道が驚異的なスピードで成長していく様を表して、「日一日とはっきりと成長が見て取れる。この上ない楽しみだ。」と口にした安西先生の存在感が光る。

 

どちらも、

①ド素人である主人公が

②当初は一見イマイチそうに見えるのに

③隠れた才能を発揮して

④急激に成長し、活躍していく

というストーリーである点という意味では、共通している。。漫画のストーリーの王道に完璧に添っていると言っても良いかもしれない。

しかし、この2つの漫画には、リアリティに関して大きな違いがある。「生い立ちと成長速度の一貫性」だ。

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幕之内一歩は、実家が釣り船屋である。父親は幼い時に海に投げ出されて亡くなったものの、遺された母親が店を継いで、一歩もずっとそれを手伝ってきた。

釣り船屋は、一般素人が1日で音を上げるレベルの重労働であった。顧客が使う大量の氷を背負って船に積み込み、荒れた海に浮かぶ船の上で、下半身だけでバランスを取りながら爆釣エリアを探す。釣りツアーが終わると深夜まで翌日の準備が続く。

氷は1回につき数十kgを担ぐ必要があるし、船の上は常人では何かに捕まらないと立ってることさえ出来ない揺れが頻繁にあった。

そのおかげで、一歩は運動経験はなかったものの、ボクシングを始める時点で同世代、同体重の平均をはるかに凌ぐ怪力と、柔軟かつ強靭な下半身を手に入れていた。それがボクシングの守破離を学ぶ過程で開花し、KO率9割を超えるとんでもないダイナマイトパンチなボクサーが出来上がっていった。

なんとなくあり得そうな話に思える。

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一歩の桜木花道はどうかというと、実は漫画上で語られてるバスケ部入部以前の運動経験があまりに少ない。タバコは吸わなかったものの、部活に属すという経験もなく不良として名を知られているだけであった。

描写からは、「地元で恐れられている」程度の存在でしかない。恐れられてる理由の半分は、髪が赤いからではなかったかと思う。

現役バスケ部員をものの相手にせず、全国トップレベルの猛者たちが驚くほど強力な花道の瞬発力、ジャンプ力、スタミナは、「ド素人が隠された才能を発揮する」という設定としては面白かったものの、冷静に考えればその根拠はないに等しい。

幕之内一歩は、その生い立ちにパワーと下半身のクオリティの秘密があるのだけれど、桜木花道の場合は、なぜ高く飛べるのか、なぜ速く動けるのか、なぜスタミナが無尽蔵なのか、についての明快な説明がない。

ド素人が高校からバスケを初めて全国優勝を狙うチームのレギュラーになりたければ、最低限のセンス、および並行して入部と同時に他者の3倍の練習を3年間繰り返す必要がある。

しかしその「3倍」に迫る時間、他のレギュラー部員たちは練習している。必然的に「3倍」の数字は達成出来ない。練習量にアドバンテージがあったとは考えにくい。

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僕は何が言いたいのか?

どちらも大好きな漫画なので、どちらがどうというつもりはない。何なら、「スラムダンク」は過去最高にしてこれからもこれを凌ぐ漫画は出てこないだろうと思っている。「はじめの一歩」も好きだが、「スラムダンク」には敵わない。

しかしである。

上に述べたように真面目に考えると、「はじめの一歩」には「生い立ちと成長速度の一貫性」があり、「スラムダンク」には「生い立ちと成長速度の一貫性」がないと言えるのではないかと僕は考えている。

つまり前者にはリアリティがあり、後者にはそれがない。前者は現実にあり得そうだが、後者は絶対にない。前者を志すのは良いが、後者を志すのはただの勘違い。そういうふうに思っている。

常に自分の身に置き換えて、自分の世界でどう活かせるかと考えることを徹底している人間からすると、次のことを言いたい。

▼幕之内一歩のように、過去に全精力を傾けて注力してきたことが、思わぬ形でフィールドを変えて役に立つことは、我々の人生でもあるかもしれない。だから、今やっていることが将来像にストレートにつながっていなくても、目の前のことに対しては全力で取り組もう。いつ何が役に立つかは、正直分からない。

という意見が一つ。もう一つは、

▼桜木花道のように、根拠の存在しない才能が、人や物事との偶然の出逢いによって突如開花し、あなたの人生を劇的に変えてくれることなど、絶対にない。あり得ない。なのに、みんな大して努力した過去がないのに、未来に対してより大きな変化を求めてないかい。義務を果たさず権利を主張するヤツをみんなバカにするけど、そいつらと同じようなことしてないかい。

というというちょっとイタい意見。

僕自身、自分には何らかの才能があると、いや、あって欲しいと願ってこの歳まで来たけれど、それは結局妄想に過ぎないはかなき夢であったということを最近痛感した。

であれば、いつまでも花道型で奇跡が起きるのを待つのではななく、一歩型で地道な努力を365日継続し根拠のある成長エンジンをつくるしかないのではないか、と思うようになった次第。

あー、かめはめ波打てたらな。

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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

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羅王(AKBとも呼ぶ修羅も多いです)

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