※野辺山ウルトラ2018完走記の途中ではありますが、予定を変更して「敗軍の将、兵を語るシリーズ」をお送りします。
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アバウト過ぎたレースプラン

問題解決の基本中の基本として、よく後輩などに伝えている話がある。
目の前に存在する問題を、大きな肉の塊のままにしておくと、それを丸呑みしてかみ砕けるティラノサウルスみたいな顎を持つレベルの超人でない限りは、処理できない。問題は、問題のまま残ることになる。
所詮はヒトレベルの顎しか持っていない僕のような凡人にとって大切なのは、大きな塊をいかに小さく一口大のサイズにして、味付けして調理して、なんなら盛り付けの見た目にもこだわって、食べやすくするかだ。
5月の野辺山ウルトラでは、100kmという長丁場に対してそれが完璧にできていた。1km単位でペース表を作り、同じ平地でも走るところと抜くところを明記。「平凡な平地に見えるけど勝負どころ!頑張れ!」なんて自分に対してエールなんかも送っちゃってた。ただこれは、出場5回目となる野辺山ウルトラだからできてたことで、初出場のみちのく津軽188kmでは、因数分解の制度が格段に落ちていた。
てことでレースプラン。
 
平地:キロ7分で走る。
登り:キロ10分で走る。
最初の100kmを15時間半で走り、残り88kmを20時間で走る。
最後:キロ12分でゾンビ走り
以上!
 
これ以上ないぐらいアバウトぉ!!!
 
一応1kmごとのペース表は作ってみたものの、序盤の50kmを除き、残り130km以上のほとんどが平地なので適当に数字を打って帳尻を合わせるのみ。とにもかくにも、最初の100kmを15時間半で走れれば、あとはなんとでもなる気がする。いや、実際多分そうだろうということで、
100km、15時間半
を合言葉に、前職同僚のフジタマンと走ることにした。
大丈夫、2ヶ月前の野辺山ウルトラは、14時間で走れている。あれよりさらに1.5時間使えるなら、多分大丈夫だろう。そしてそんな楽観的なプランは、最初の10kmで打ち砕かれることになった。
走れない。全然走れない。
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暑い!暑いですよ!なんとかしなさい、ザーボンさん!

しつこいようだけれど、この日の弘前は暑かった。
なんと、最高気温32.8度。朝6時にスタートしたあと開始1kmぐらいから汗だくで、どうやら湿度も最高レベルに高かった模様。暑さに強いデブ代表を自負してはいるが、しかししんどい。
2014年の柴又ウルトラでは、遮蔽物が一切ない河原で33度の炎天下の中を走ったと記憶している。エイドごとにアザラシのよう日陰に打ち上げられたランナーたちを尻目に、黙々と87kgのカラダを引きずりながら何の異常もなく走りきることができた。
が、今日はあのときよりも暑い。
もうね、暑いしか記憶がないんですよ、専務。
 
ということで何のかんのと文句を言いながら、22.2km地点のCP1(チェックポイント)、嶽温泉に到着。3時間10分かかったが、ほぼ予定通り。タイム的には予想通りだけれど、体力は10km過ぎから削られ続け、予想以上の疲労が溜まっているのがわかる。

CP横には超神水としか思えない天然の極冷え湧き水があり、そこでたっぷり水を補給。伴走していた青森出身のフジタマンが言っていたのが印象的。
「オラ、東京さいぐまで、水を買うなんて習慣ながっだだぁ。」
普段東京弁を話すフジタマンも、この日ばかりはリラックスしたのか、少し故郷の言葉を話すようになっていた。
 
ここからは次のCP2くろもり館までは少しアップダウンがあり、溜め込んだ栄養でぶよぶよになった腹を抱えながらでも、下りなら少しは走れる。
引き続き暑さにうなだれながらも、明るく楽しくフジタマンと話しながら走ることができた。仕事のこと、家族のこと、前職のこと、去っていった仲間たちのこと(生命保険業界は、全体で言えば2年で9割が去ると言われているのでそこそこ修羅の国・・・)
僕もフジタマンも10年以上勤めた前職を今時点で辞めており、僕が25才、フジタマンが31才で入社した時のことから色々と回想し、思い出を共有しあっていた。ある意味で頭のネジが外れているというか、一種のヘンタイでないと生き残れない業界ならではの個性的な仲間に囲まれていた前職時代。
ああ、そういえばスワッピングが趣味だという、モノホンのヘンタイもいたな、なんて話をしながら、気づけば38.6km地点、CP2くろもり館に到着。

6時間ちょっとで到着し、これも予定通り。そして、予定通りじゃないのは、残存体力だったって話。
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CP2くろもり館(38.6km)〜CP3日本海拠点館(59.9km)

くろもり館には、素晴らしいエイドが設置されていた。

メロン!!!
 
溢れ出る果汁、ほどよい甘さ。完璧。まさに完璧なエイドフード。
激ウマそうめんを4杯ご馳走になりつつ、合間にメロンを挟む。塩気、甘み、塩気、甘み。至福のゴールデンサイクル。
いずれも津軽のおばちゃまがクソ暑いなか一生懸命準備してくれて、もはや感謝しかない。精一杯の感謝を伝えつつ、報いることができるのは完走だけだと改めて心に誓い、出発する。
ここにも超神水が湧き出ていて、1.5Lフルに補給。
ここから59.9km地点のCP3までは、ほぼ下りながら鯵ヶ沢を抜けて、日本海側へ。やっと走れる。
 
で、すぐに分かった。
甘かった・・・。
野辺山ウルトラで「下り」というと、高低差1000m近い坂をずーっと下りていくので、本当に坂にカラダを預けて走ることができる。キロ5分台で走ることは難しくなく、場合によってはキロ5分20秒などのフルマラソンペースにまでスピードが上がる。
が、それなりに下っているように見えたこのみちのく津軽188kmの「下り」は、大した傾斜ではなかった。平地がほんのちょびっと傾いているぐらい。確かに走れなくはないが、大してスピードは出ない。
下りはキロ6分半で押す予定が、なんのかんのと休憩に時間を食われてしまい、キロ7分程度に。
 
楽しみにしていた下りはあっさりと終わってしまい、日本海側に抜けるとただひたすら海沿いの平地を走るのみ。このあたりはキロ8分台を平気で刻むようになる。
理由の1つは重さ。自らのカラダに加えて1.5Lもの水を搭載して走るのは、それだけでかなりのスピードダウンを伴う。飲む分と頭からかける分を考えると、1Lでは到底足りないので仕方ない。
それから細かい話ではあるが、序盤で地図を無くしていたことも痛かった。標識も案内員もいないレースでは命綱とも言える地図が、なんとどこかのエイドで落下。以降、共に走るフジタマンにいちいち確認せねばならなかった。
さらにはリュック問題。滅多に使わないリュックのマジックテープがポンコツで、貼っても貼ってもベリっとはがれて肩から荷物が落ちてくる。
今回のような超長距離レースでは、「あれ?ちょっとおかしいな?」、「なんだろ?ちょっと気持ち悪い感じだぞ?」といった、些細で微妙で、しかし致命的ではないアレコレが、中長期的にダメージを与えてくる。
 
上記の地図とリュック問題以外にも、
▼暑い!のはいいとしても、各エイド間が15km以上離れているため、不安から水をフル搭載せねばならない。
▼それでもなくならない水への不安。特に自分のような大型選手はなおさら。
▼肩の脱臼の痛みの再発。リュック不調で肩を何度も動かさねばならないので、いつ爆発するかと不安しきりだった。
▼そもそも道の188kmというレースを走っていることそのものへの漠然とした不安。
▼怪我のブランクで練習を積み上げられてないことへの体力的不安。
などが重なり、消耗は普段の倍以上も積み重なっていった。
あとどうでもいいが、
▼通り過ぎるランナーの鍛え抜かれた圧倒的なふくらはぎを見せつけられるたびに、「自分はこのレースに出てはいけなかったんではないだろうか」と毎度猛省。
というのも疲労の一因であった。
顔はみんな普通でも、ウルトラランナーはみんなふくらはぎが半端ない。筋トレが好き過ぎていつまでも結婚できない武田真治先生は「胸板の厚さは真摯さの証明である」みたいなことを言っていたけど、全く同じ感覚で、「ふくらはぎが彫刻みたいになってる人は、自分にも他人にも嘘をつかない」と言いたい。
それぐらい、彼我のふくらはぎのオーラは絶対的に差があった。僕のふくらはぎは、明らかに走りこみが足りてない人のそれであった。
名将安西先生は、「ちょっとした違和感」を常に相手に与え続けることが、自分より強いチームと戦うときのコツであると山王戦前に言っていたが、まさにそれを自分が食らったような形だった。少しずつの違和感が、少しずつ、しかしはっきり分かる形で体力を奪っていく。
 
そうして色々反省したり凹んだりしながら、CP3直前にあった海の家「はまなす食堂」さんに駆け込む。
猛暑の中を50km以上走ってきて、それでラーメンなんて食えるか、と思いそうなものだけれど、この日の僕たちはよほど塩分を失っていたのだろうと思う。僕もフジタマンも、お互い顔を見合わせつつ、「しょうがねえな・・・」と何がしょうがないのかよくわからないまま勢いよく飛び込んでいった。

 
ここで食べたしょうゆラーメンは、破壊的に美味かった。なんとたったの500円。カラダ全体に染み渡る、まこと素晴らしいお味でございますた。

 
たっぷり塩分と栄養を補給し、59.9km地点のCP3日本海拠点館に到着。ここのエイドは小規模なので、ラーメン食べておいてよかった。。。スタートからここまで9時間50分かかって到着。
羅王プランに対してはビハインドしているが、フジタマンプラン上はぴったりという感じ。

そして僕たちのペースは、ここから少しずつ下降線をたどるように遅くなっていく。。。
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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。

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