野辺山100kmウルトラマラソン2018完走記です。制限時間6分前の13時間54分でのゴール。いつもながらのギリギリ完走記です。
 
野辺山ウルトラ完走記2018を最初からお読みになる場合はこちら。

 
初参加となった野辺山ウルトラ2014の完走記はこちら。

 
2回目の完走となった野辺山ウルトラ2015の完走記はこちら。

 
初リタイヤとなった野辺山ウルトラ2016の惨敗記はこちら。2017は惨敗過ぎて記事にすらなってません。

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(あらすじ)
チーム・プロージットの面々のリタイヤ、関門切れ報告が続々と届く。そして、心友・熊も65km付近でついに脱落。一緒にしばらく走っていたフランクミウラ、ゼッキーとも姿がしばらく見えない。結局のところ、言い出しっぺである僕とプリンス海老澤しか残っていなかった。仕方ない、2人でゴールしよう。そう思いながら71km地点滝見の湯に着いてみると、なんとすぐ後ろから脱落したと思っていたフランクミウラとゼッキーの2人が、死にそうな顔をしながら到着した。。。
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71km滝見の湯にて、ファンタスティック・フォーを結成


ビッグエイドである71km滝見の湯には、ドロップバッグが預けてある。ここからゴールまで約30kmの道のりを走破するのに必要な補給物質が入っており、トイレに行ってから補給しようと戻ってくると、なんとそこにはフランクミウラとゼッキーがいた。
50km地点から65km地点ぐらいまで、なんども一緒に走り、しかしなんどもバラけてきたのがフランクミウラとゼッキー。疲労が蓄積していたのか弱気なコメントも聞こえるようになり、65km以降は姿を見ることもなくなってしまった。またこちらとしても余裕がなかったことから、かろうじて一緒に走れていたプリンス海老澤と、2人きりでのゴールになるものと覚悟を決めていた。
せっかく誘ったけど無理だったか。ゴールさせてあげたかったけど厳しかったか。でも、お前たちの分までゴールするぞ。安心して旅立ってくれ。
そんなことを思いながら勝手に心の中で手を合わせていたのだけれど、どっこい、なんと僕が少しトイレに行っている間に、2人の漢たちは滝見の湯に到着していた。僕が彼らの完走を諦めてしまっていた一方で、彼らは勝負を全く諦めていなかったのである。
こ、この男たち、底が知れん!!

(スラムダンクより拝借)

驚くとともに、涙が溢れてきそうになるのをぐっとこらえた。そして、心の中で少しのワビを入れた。
お前ら、マジでハンパねーよ。
そして、ここまで来てくれてありがとう。
プリンス海老澤も含め、普段は元気とチャラさが取り柄の漢たちに、もはや覇気はない。顔はイってるし、表情は虚ろ。声に張りもない。人生初の71kmという距離、そしてここまでの激坂は、彼らを想像以上に消耗させていたようだった。
このとき、彼らの頭の中に完走という文字がないわけではなかった。ただしそれは、都会の夜空に見るシリウスの輝きのように、極めて頼りなさげにチカチカしている程度の輝きしか放っていなかったことと思う。枯渇しつつある残存エネルギーと、ここから激坂を含めた29kmという距離。いつ潰えてもおかしくない光しか、彼らには見えていなかった。

 
ただし、彼らには一つだけ希望があった。そう、である。
正確にいえば、僕の経験である。
僕は2回の完走経験を誇り、そしてそのいずれよりも良いタイムでここまで来ていた。どうなると完走になって、どうなると完走できないか。それは過去4回の出場で、痛いほどカラダに叩き込まれている。開始から9時間半でこの71km滝見の湯まで来れていて、そして79km馬越峠に11時間でたどり着ければ、完走の目算は非常に高い。
名将安西先生は、初出場となった全国大会で、山王工業戦を前に、湘北メンバーに対してこう言い放った。
「彼ら(山王工業)には何よりも、
去年このトーナメントを最後まで勝ち抜いた”経験”がある。
この違いは思いのほか大きいものだ。」
そう、知っているか知らないか、やったことがあるかないか、経験しているかしてないかの違いは、非常に大きい。そしてその非常に大きなアドバンテージを、この勝負所に来て僕は持っていた。
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また一つの懸念として、プロージットの3人の目から、特にフランクミウラとゼッキーの目からは、放っておくと希望の光が消えかけそうなっているようにも思えた。都会の夜空に見るシリウスも、雲がかかったり大気が霞んだりと、ふとしたことで見えなくなってしまう。
同様に、ここまで100%の力を出し切ってたどり着いた2人の目には、ともすればちょっとしたことで絶望の淵に堕ちてしまいそうな危うさがあった。すでにサブ4を連発していたプリンス海老澤はともかく、フランクミウラとゼッキーは危ない。
一方で過去の経験からして、今の所贔屓目に見ても90%程度の確率で完走できる状況にあった。怖いのは、絶望とそれに伴う思考停止、そして足が動かなくなることだけだ。
 
そこで僕は、ここからの29km、「とにかく明るい羅王」を演じることにした。彼らの希望になろうと決めたのだ。
偉大なリーダーというのは、総じて明るい。どれだけピンチな状況になったとて、この人がいればなんとなく大丈夫そうな気にさせてくれる。胃がやられてゲロを吐いても、「安心してください、吐いてます」と言われれば、なんとなく大丈夫そうに見えるだろう。
ということで、まだまだ元気ですよアピール。半分は自分のため、もう半分はメンバーに見せつけるため。ほんとは股関節がギシギシいっていたが、90度近くまで膝を曲げるフィジカルがまだあることを匂わせた。

 
そして伝家の宝刀、アンパンマンの歯ブラシで歯磨き。ジェルでネバネバになった口内に、爽やかさが蘇る。ほんの少しの気晴らしが、限界状態では力をくれる。

 
そして出発。
声が出てないのでなんどもやり直しをさせ、全員で雄叫びをあげる。必ず全員で完走しよう。俺が必ず連れてってやる。ファンタスティック・フォーの結成だ!

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71km滝見の湯〜79km馬越峠

地図上では、ここからは激坂。
しかし実際は、本当に大変なのはラスト5kmほどで、そこまでは少しなりとも走ることができる。79km地点には開始11時間で到着すれば良いので、ここからの8kmはキロ11分ずつ使っても、大丈夫な計算だ。
 
僕は、2つの意思決定をした。
1つは、先ほど述べた通り、何があってもファンタスティック・フォーのメンバーをゴールまで連れていく。そしてそのためには「とにかく明るい羅王」を演じると決めた。
組織においては、リーダーが目標を達成できるとどれだけ信じられているか、それをメンバーは結構見ているものである。そして、メンバーが目標達成を信じられるかどうか、そのために動けるかどうかは、リーダーの思い込みに依るところが非常に大きい。
言うなれば、本気かつ楽観的、これがリーダーに必要な姿勢だ。それでこそ、メンバーは見えないものが見え、信じられないものが信じられるようになる。
たとえ彼らが絶望しても嗚咽しても、自分だけはゴールを必ずできると信じていよう、そして常に明るくいよう、そう心に決めた。
 
いま1つは、彼らに対して手加減をやめることを決めた。
ゆうても限界を迎えつつあるフィジカル。少し気を抜いただけで、全てが持っていかれそうになる。先の見通しを持っている僕はまだしも、残り3人にとっては果てしない苦痛の道に見えるだろうし、疲労度は僕の比ではないだろう。
ここから先は真剣勝負。クライアントだからといって、これまでのように気を使って、それで完走できませんでしたなんてことになったら、話にならない。
3人に告げる。
「済まん、もう余裕がないので、ここからはタメ語に切り替える。
叱咤どころか、気が抜けてたら罵倒もすると思う。
そして、ここからは全て俺の指示にしたがってくれ。
オリジナリティはナシだ。
ただし、必ずゴールまで連れていく。必ず全員をゴールさせる。
それで良いか。」
「当然だろう?」というふうに、3人がうなづく。もはや、4人は一心同体だ。僕の経験値を最上位に置き、キツかろうがツラかろうがその原理原則に従ってカラダを動かしていく。そういうDiscipline(規律)がチームに生まれた。

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79km地点馬越峠にたどり着くために定めたルールは、2つ。
1つは、登りは捨てる。登りは僕たちのようなギリギリランナーにとって、非常にコスパが悪い。頑張って走ったとしてもスピードは出ないし、そのわりに疲労度はMAXだ。
よって、捨てる。捨てて、早歩きをする。不安からか、隙あらば走ろうとするゼッキーを何度止めたか分からない。
 
2つめは、「計画通り以上のこと」を絶対にしない。
滝見の湯ぐらいまでは、立てた計画よりも上回ることは、決して悪いことではなかった。貯金ができればできただけ余裕が持てるし、その余裕が安定したペースを生む。
しかしここからは少し話が違って、尽きかけた資源をいかに効率よく使い、延命させ、ゴールするまで保つようにマネジメントするかが問われる。1ミリ足りとも余裕などない。
僕たちは、「完走」を最大最高の目標に定めた。もはや、タイムなどどうでも良いし、完走さえできれば手段は問わない。これが正しいなどと言うつもりは毛頭ないけれど、今の僕たちにとっての正義は「完走」だ。
だから、ポカリの開けられない三井寿みたいな状態になりながらもゴールまでこぎつけるために、僕ではなく計画に最上位の地位を与えた。逆にいうと、完走のためにはエゴも個性も捨てるということだ。走れそうなところでも、走らない。早歩きすら、そのペースを抑えて筋肉の消耗を控える。
 
これは、僕が前回の教訓から学んだことである。
限界に近い状態では、ふとした瞬間にカラダがふっと軽くなって「なんだかイケそうな気がするぅ〜!」と暴走してしまうことがある。
それは実はランナーズハイみたいな便利なものではなく、どちらかというと命の最後のともし火みたいなもので、ちょびっと燃えてその後には灰しか残らない。
ちょっと走れたと思った直後にカラダが全く動かなくなり、そしてリタイヤ。それが前回のレースだった。71km滝見の湯から数kmほどのゆるやかな坂を、元気に登った直後にエネルギー切れ。1ミリも動けなくなり、道端に倒れるかと思うほどフラフラしてしまった。
限界を超えて走っていると、そういういわば「デッドラインズ・ハイ」みたいなものに遭遇し、調子に乗り、そして昇天してしまう。
その教訓があったからこそ、ゼッキーが少しペースを守らないだけでも怒り倒した。「抑えろっつってんだろ!」と、何度か吼えたと思う。ごめんねゼッキー。

 
とにかく走らない。焦らない。本当に走れるところだけ走る。ペースを守る。
3人はあまりの遅さに不安だったかもしれないが、僕には完走の確信があった。だから、ルールを一切曲げることはなかった。
そして僕は、自分にとってはリスクでしかない言葉を吐き続けた。
「俺を信じろ。」、「大丈夫だ。」、「ゴールは必ずできる。」
その言葉たちは、少しずつファンタスティック・フォーの面々に染み込んでいったと思う。
そうして僕たちは、いつの間にか79km地点馬越峠の頂上にたどり着いた。
ついに、山場を越えた。予定より10分早い。これ以上ないほどの展開だ。いける。必ずいける。

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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。
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