知人のK-1選手の応援に向かうため、水道橋駅をフラフラと歩いていたときのこと。
2つの店舗が併設されているのが、ふと目に止まった。いずれも業界の勇で、泣く子も黙るセブンイレブンと、泣く子も黙るスターバックス。
別になんてことない光景なのだけれど、経費削減が今の経営テーマになっている僕にとっては、セブンはともかく、スタバまでが満席になっている様子に不思議な感じを覚えた。
セブンでコーヒーを買えば100円。対するスタバは280円。その差約3倍。このコーヒー戦争は勝負にすらならないように思える。
にも関わらず、セブンよりもむしろスタバの方が賑わっているのはなんなんだろう。何がどーなってこーいうことになってるんだろうと、普段なら考えもしないことにふと頭が向いた。
そしてなぜか、新卒時代の思い出が甦ってきた。
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僕が新卒で入った外資系のIT企業では、主にインフラを扱っていた。
そのインフラ事業において、ひとつの重要な概念として、"Aggregation"なる考え方があった。「集合」とか「集約」といった意味で、当時はいろんな規格が乱立して散らかり放題だったITインフラを、「"Aggregation"しましょう」というのが社会に対するメッセージでもあり、その企業が持っていたソリューションの強みでもあった。
要するに、「あれもこれもウチでできまっせ!まとめましょうや!」ということだった。当たり前の話ながら、2つのインフラが重複しているものを1つのインフラでできたら、コストも管理の手間も半分になる。
イメージとしては、東名高速と中央高速があるのはいいけど、効率悪いから東京から大阪まで幅が超広いアウトバーンをガーっと引いちゃいましょう!というのに似ている。なるほどなるほど、”Aggregation"すごいやんけ!と当時は思ったものだった。
 
一方、当時日本最強の戦闘力を誇ったとあるクライアントは、そんな良いところしかなさそうな"Aggregation"のコンセプトに対して、こういう反論の仕方をしてきた。
「いや、"Aggregation"しすぎると、なにかトラブったら全部止まるやん。そんなん危なっかしくてできんわ!だから敢えて多少効率悪くても分散させてんねん!」
これは、(今では当たり前だと思ってるが)当時の外資かぶれた僕にとっては衝撃的な考えであった。考えてみれば、そのクライアントは製造業であり、工場や事務所のインフラが止まるのは事業的に完全にアウト。ゆえに、「携帯の電波悪いからちょっと我慢してや」で通じる一般顧客とは比較にならない厳しさを持っていた。
そして、外資特有の製品品質の問題もあり、IT機器はよくトラブルを起こしていた。現実的に考えて正しいのは、クライアントの方だったと今では思っている。"Aggregation"も良いが、そうでない形で敢えて非効率を残すのもアリなんだな、と、ちょっとだけパラダイムシフトが起きた出来事だった。
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てな話を、セブンイレブンとスターバックスが並列しているのを見て、思い出していた。
「コーヒーを買う」という行為を、"Aggregation"の概念からのみ考えれば、少し前であれば自販機、今で言えばセブンを始めとしたコンビニ勢の100円コーヒーの圧勝である。
そこそこのクオリティのコーヒーを、たった100円で飲めるのだから、それでおしまい。勝負あり。その他のコーヒーは全て駆逐されてもおかしくない・・・ように思える。
 
しかし現実は、スタバはいつも満席である。僕がよく行くドトールもだいたい満席であり、僕が一番好きなタリーズもいつも満席である。
値段はそれぞれセブンのコーヒーの数倍するけれど、それはそれとして、コーヒーの市場はそこまで揺らいでいない。セブンはじめコンビニのコーヒーに全てのコーヒーが"Aggregation"される、ということもどうやらなさそうである。
ゆくゆくは徐々に人々がセブンのコーヒーにシフトしていくような気もしているけれど、ではスタバの市場がなくなるかというと、そうでもなさそうだ。
 
これは考えてみれば当たり前の話で、要は市場が違うという話に帰結する。
セブンのコーヒーは僕のようなビジネスパーソンがランチ後にピュッと買うためのもので、スタバのコーヒーは打ち合わせや仕事をカフェでするときに買うものである。
双方が対象とする顧客が違うのだから、たとえ全く同じコーヒーを売っていたとしても、市場が"Aggregation"されることはない。対象とする顧客、使用用途、提供目的、価格など、セブンとスタバでは「ちょっとズレている」。
これがミソである。
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事はコーヒー業界に限らず、多くの個人事業主が展開しているスモールビジネスにおいても、この「ちょっとズレている」というのは、とても大事な考え方になる。
スモールビジネスをしていると、自分よりも規模においても質においてもはるかに上回る競合がやたら目に入る。そういう会社はHPも立派であり、SNSもちゃんとやっており、著書も豊富にあり、実績は桁が違う。
そういうのを見ていると、自分なんてなんの意味もないんじゃないか。自分がやるよりあそこに任せた方がいいんじゃないか。てか、お客さんはみんなそう思ってんじゃないか。ああ生きててごめんなさい。
そんな妄想に襲われることも多々ある。自分とロジャー・フェデラーを比べて、「ああ、自分はなんてダメなテニス選手なんだ」と凹むのと同じぐらい意味のない行為なのだけれど、インターネットで色々わかっちゃう時代には、こういう被害妄想もそれなりに確率高く起こる。
 
ではどうするか。
そういった客観値だけではどうにもこうにも勝てなさそうな競合相手にも、この「ちょっとズレている」状態をどうにかして作れないだろうか、と考えてみようというのが、今日のメッセージ。
100円のコーヒーが登場した瞬間に全ての市場が"Aggregation"されてしまったかと思いきやそうではなく、スタバやタリーズは引き続き何百円もするコーヒーを売り続けている。
それと同様に、自らのビジネスにおいても対象とする顧客、使用用途、提供目的、価格に関して「ちょっとズレている」状態を作り出すことで、自分だけのマーケットが作れやしないだろうか。
そんなことを日頃から思考する癖をつけたいなと思った秋の夕暮れ。世の中の優れた会社や優れた商品が市場全てを席巻するかというとそんなことはなく、意外や意外に潰れそうなほどボロい中華がサラリーマンでいっぱいだったり、明らかに時代遅れに見える電気屋さんが、じーさんばーさんに大人気で生き残ってたりする。
それぞれ、意図的か否かは別として、「ちょっとズレている」状態を作って顧客のニーズを捕まえているから成り立っているのだろうと思う。
生きる道は探せば、あるいは作れば、いくらでもあるということだ。
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