優績保険代理店向けのカンファレンスで、あのサッカー日本代表の西野朗前監督の講演を聞くことができた。
W杯では久々に泣いたし、心から感動させてもらったので、めちゃくちゃ楽しみに福岡までマッハで飛んでいったのだけれど、結論から言うと、
過去数百回聞いた講演の中でも、トップ5に入るぐらい残念な感じだった
ので、その悲報の詳細についてお届けしたい。そしてW杯でサッカー日本代表がベスト16まで行けた、おそらく本当の理由も。
なお、サッカー部だったのにサッカー部以外のヤツらよりサッカーが下手で、テニス部じゃないのにテニス部のヤツらよりもテニスが上手かった僕がサッカーについて考え書いてることなので、ひょっとしたら全部的外れな話かもしれません。そこはご愛嬌。
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カンファレンスには数百人が集まり、プロが演出した感満載の素晴らしい会場で行われた。その基調講演が西野前監督。元サッカー部だし、W杯はめっちゃ感動したし、楽しみで仕方なかった。
西野前監督が現れる。ついにあのW杯の舞台裏が聞けるのか!なんだったら今日の話は結果を出す組織の作り方、そしてリーダーシップ!僕のもう一つの本業であるコンサルティングにも活かせそうやないか!
挨拶を終え、話し始める西野前監督。そして最初の1分で第1の残念ポイントに気づく。
圧倒的に間が悪い。
 
今回は、西野前監督とインタビュアーのお姉さん(フェロモン多め)との対談形式になっていて、インタビュアーが色々質問し、それに答えるという形。
普通にしてれば普通に進むはずのこの形式。特段なんの問題もないように思えるが、なぜかインタビュアーの話し出しと西野前監督の話し出しがぶつかる。
インタビュアーの「あのー」と西野前監督の「えーっと」がかぶり、インタビューの「そういえば」と西野前監督の「実はですね」がかぶる。まるで、リュウとケンが同時に波動拳を出し合って相殺し合ってる様子とウリ四つ。

これは一般的にはインタビュアーのせいだと思われるかもしれないけれど、西野前監督は聞かれたことに対して答えるのに数秒空くので、回答を考えているのか、質問を補足する必要があるのかの判断が難しい。お姉さん(フェロモン多め)がかわいそうだった。
話し終わったのかなと思ってインタビュアーが次の質問をしようとすると、思い出したように別の話を始めるので、これは場のコントロールが難しいだろうなと個人的には思った。
会話がガチャるのは、話してる方にとっても聞いてる方にとっても、良くない。
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次に発見した残念ポイント。それは、
聞かれたことに答えない。
 
こういった講演の場合、インタビュアーは聴衆が知りたいであろうことを質問に代えて講演者に聞く。それに対する講演者のマナーとしては、聞かれた質問の意図を察して、自分の持っている知識、経験の中から聴衆が知りたいであろうことをストーリーにして答える。これが鉄則だ。
しかし、西野前監督は、「そ、そっちじゃねぇ・・・」と思ってしまうような答えが多かった。インタビュアーが「日本に帰ってきて、道を普通に歩けなかったんじゃないんですか?西野さん?」と聞いてるのに、
「まぁ選手たちはプロですから人目にはつくでしょうね。。。」
と明々後日の方向の回答。あんたのこと聞いとんねん!とインタビュアーのお姉さんがキレてんじゃないかと危惧するほどのズレ。ねじれの位置のやりとりが続く。
 
ちなみに、僕が西野前監督だったら、こんな感じで答える。
「W杯前は僕がその辺歩いてても、サッカーに詳しい人でもないと呼び止められるなんてことはなかったんですが、帰ってきたらエライことになってました。冗談抜きで10mおきぐらいに呼び止められる。なんかトムクルーズの気分がちょっとだけわかった気がします。ロシアでは日本の様子が分からないのでここまで国内が大変な騒ぎになってるとは思ってませんでしたけど、帰ってきて改めて、みなさんにこんなに応援してもらってたんだなと気づきました。もちろん僕たちも頑張りましたけど、数千キロ離れたところからのパワーの後押しがあったことは間違いありません。応援いただき、本当にありがとうございました。」
予想はいちいち覆された。
***
さらに!
話に具体⇆抽象の行き来がない
ので、やたらと話が分かりにくかった。
 
僕は、完璧なプレゼンテーションとは、話す側の人間の頭の中のイメージと、聞く側の人間の頭の中のイメージを、完璧に同期させることだと思っている。僕が見ている景色と、相手が見ている景色が、同じものになればそれが価値あるプレゼン、ということ。
それを言葉というツールを使って成立させるのは、当然のことながら難しい。そんなときに大事なのは、上記の具体⇆抽象の往復によってイメージを立体的にして、伝達効率を高めることである。
 
「勝因はなんだったのでしょうか?」という質問に対し、
「日本人らしさを出したことでしょうか・・・」という答えがあった。この答えは非常に抽象的であり、これだけでは分かったような、分からないような微妙な状態に過ぎない。ここにいくつかの具体例を添えることで、「日本人らしさ」のなんたるかが伝わる。
しかしなぜか、「日本人らしさを出したことでしょうか・・・」で回答がおしまい。インタビュアーも西野前監督のカテナチオに攻めあぐねている様子が伺えた。
 
具体例をいくつか挙げた上で、一段抽象度を高めて整理することもとても重要。一見別の話に聞こえるいくつかの事例は、実は一つの抽象的な概念で説明できる、という考え方は、伝達効率を高める上で非常に役立つ。別個の事象に見えて、しかしそれらに通底する一つの方程式を提示してあげると、途端に聞く側の理解度が高まるのである。
ちなみに僕に言わせると、「ドラゴンボール」と中小企業の事業承継は、同じ文脈で語ることができる2つの教材である。
これも、西野前監督は具体例なら具体例をいくつか挙げるばかりで、その抽象化作業がなかったため、全部別の話に聞こえたまま話題が次に移ってしまった。西野前監督の脳内を、僕たち聴衆はほとんど知ることができなかった。
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名誉毀損レベルでボコボコに言ってきたけれど、じゃあ西野前監督の講演を聞くべきじゃない、と伝えたいのかというと、実はそうではない。
僕としては、西野前監督の講演者としての全盛期は、3−5年後に来ると思っている。ちなみにほぼ同じ事例として挙げられるのは、ミスター・ラグビーこと平尾誠二さん。僕が聞いたときは神レベルの講演だったが、実は最初はひどかった、という話。その話は下記参照。

この両偉人を見ていて思うのは、専門領域でプロフェッショナルであることと、それを伝達することの巧拙とは全く別のスキルであり、スゴイ人だからスゴイ講演が聞けるはず、という当て推量で考えない方が良い、ということだ。
2018年W杯で経験したことが西野前監督の中で総括され、言語化され、法則化されてさらに数百の場数を踏めば、いつか平尾誠二さんレベルの神講演者になるのではないかと思う。今回は、あまりにもW杯からの時間が短過ぎたということ。
 
ちなみに、ある講演会に野球界のレジェンド・ノムさんを呼んだら、2時間ボヤキ続けて全員寝たらしい。どこでちゃんとした話になるか、全員が楽しみにしていたが、ボヤキだけで終わったとな。
まぁこの辺はイベント主催側に回った人間の苦悩として僕も何度も経験してるから言えることではあるが、講演会の永遠の課題であると思う。
では最後に、サッカー日本代表がW杯ベスト16まで進めた本当の理由について、触れておきたい。
***
「西野さん、マジ言ってることが分かんねぇ。
ヤバくね?これヤバくね?つーかどうするよ俺ら!?」
これが、サッカー日本代表の選手たちが、西野前監督が監督に就任して少し経ってから持った感想なのではないかと僕は推察する。
 
上記の講演の残念ポイントを思い出してほしい。
1、間が悪い。
2、聞かれたことに答えない。
3、具体⇆抽象の行き来がない
の三点セットは、コミュニケーションを瓦解させるためのエクスカリバーだ。西野前監督は、講演だからそうなったのではなさそうなレベルでアレであり、日常から残念ポイントを遺憾無く発揮しているに違いないと僕は判断した。
選手たちは当然混乱したはずだ。やばい、日本語のはずなのに、日本語に聞こえない。言ってる意味が分からない。W杯、2ヶ月後なんですけど・・・。
 
そして、ならばと選手たちは自分たちで話すようになった・・・のではないだろうか。
ハリルホジッチ時代は「理論的には正しいが、常に抑圧されている」とでも表現すべき環境でサッカーをせざるを得なかった。ハリルホジッチの要求は常に高くて厳しく、ワールドクラスとはこういうものだ、弱者の戦略とはこういうものだというのを、トップダウンで選手たちに強制していた。
結果は出なかったが、選手たちの力量は間違いなく上がっていた。株で言うところの「含み益」が数年間かけて積み上がっていたのだろう。一方、自主性という意味では、犠牲になっていたものも少なくない程度にあり、言われたことに従う文化が出来上がっていた。
 
そこに現れた西野前監督。
ハリルホジッチと違って、たくさん褒めてくれる。しかし言ってることはほとんど意味が分からない。あれ、また西野さん、聞いたことと違うこと答えてるぞ。あれ、結局なんの話だったんだ?ハリルよりわかんねーぞ?日本人らしさってなんなんだ!?
選手たちは、互いに話をせざるを得なくなった。強制的に自主性を発揮せざるを得なくなった。ハリルホジッチ時代に培った地力に、この強制的に発揮した自主性がアドオンされ、化学反応が起きた。
結果、日本代表はベルギー代表を倒す寸前まで追い詰めるほどの、高いレベルのサッカーを繰り広げるまでになった。「含み益」を開放した日本代表は、FIFAランク世界1位を食いかけたのである。重い道着を着て修行して、脱いだらめっちゃ強くなってた孫悟空みたいなものだ。
 
・・・というのが、サッカー日本代表が驚くようなパフォーマンスを見せてくれた、事の真相なのではないかと思いますが、どうざんしょ?
なお、西野前監督は「全部選手のおかげ」と言っていたので、その点に関しては正しいと思われ。ただ、講演の内容が「組織とリーダーシップ」なので、それを「全部選手のおかげ」だけで済ませないでほしかったですな。もし選手たちの「含み益」を顕在化させるために敢えて訳分からない話をしたのだとしたら、それこそ名将。
とりあえず、西野前監督には百戦ほどこなしてもらいたいものですね。ンフフフフ。
繰り返しますが、サッカー部だったのにサッカー部以外のヤツらよりサッカーが下手で、テニス部じゃないのにテニス部のヤツらよりもテニスが上手かった僕がサッカーについて考え書いてることなので、諸々ご容赦のほど。
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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。
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