昔、テニスのジョコビッチだったかのインタビューで、彼がこんなことを言っていたのとても印象的だった。
詳細は忘れてしまったが、ニュアンスとしては、こんなことを言っていた。曰く、
 

当たり前のことながら、試合に勝ち続けると、スケジュールの大半は試合ばかりになる。
しかしそれではフィットネス(ダッシュとか筋トレとか体幹とかフットワークとか)に割く時間が取れないため、試合に勝っているはずなのにだんだんとカラダが弱くなっていく。
そうすると必然的に、そのうち勝てなくなる。だから、どんなに勝っていたとしても、フィットネスの時間を常に確保するようにしなければならない。
でも勝ってるとそれができないし忘れがちだから、気をつけないとね。
 

これは当時非常に趣き深い言葉だと感じた記憶がある。トップなんだから勝つだけ勝てばいいんじゃないの?なんて単純に思っていたので、
試合に出るだけだとカラダが弱くなる
というのは盲点だった。
 
たしかに、試合はある意味で発表会の場であり、勝率を問われる場である。全力で何かをする場面ももちろんあるが、基本的にはテニスであれば、相手よりも多く点を取り、失点を相手よりも少なくすることを最優先に考えることになる。全力で動けば良いというものでもない。
常に全力で動くことはせず、出すところは出し、抜くところは抜く。ちょうど、バルセロナのメッシがそんな感じだろうか。メッシはとある試合で、通常の選手がひと試合で10km走るところを、スプリント(全力ダッシュ)がなんとたったの100mしかないという驚異的な「サボり」を披露した。
ちなみにそれで点を取るところがメッシがバケモノである所以。年齢とともに落ちていくフィジカルを、抜群の状況判断でカバーしている。
 
試合に出なければ、試合勘が鈍り、勝てなくなる。出場機会はとっても大事。しかし、試合に出ているだけでは、カラダが弱くなり、これもまた勝てなくなる。スポーツでトップレベルを維持する難しさを知った話だった。
当たり前のことながら練習は大事で、練習でこそ全力を出しておく。そして全力をいつでも出せる状態をつくり、また試合へと向かっていく。ジョコビッチのフットワークも、メッシのここぞというときのダッシュも、試合ではなく、練習に支えられている。
言われてみれば当たり前の話だけれど、ジョコビッチやメッシと言えど、試合に出ているだけでは不十分なんだというのが、自分的には衝撃だった。
***
翻って冒頭の写真。
写真の主役は、ウチ(保険代理店)に最近入社してきたA氏。御年40代後半の圧倒的な大人。推定体重、100kg。声がデカく、いつも不必要そうなところでもガハハハと笑っている。
販売初月で驚きの数字を挙げ、社内に衝撃をもたらしたトップセールスだが、数字以上の衝撃をもたらしたのが、とある歓迎会でのカラオケでの出来事だった。自分が振られたときは飲み、人の分まで自分の名前が呼ばれたと勘違いして飲む。
歓迎会ということもあり、滅多にやらないコールが飛び交い、その全てを受けて立っていた。漢らしい飲みっぷりそのもので、この漢には底がないのかと他を驚愕させるほどの勢いだった。
 
底は、意外にすぐそこにあった。
冒頭から飛ばしに飛ばし、2時間が経つ頃には写真の状態に。100kg近い体躯のまま便所にこんにちはの状態となり、今まで人類が手を伸ばしたことがないであろう部分に手を突っ込みながら、ご臨終となった。
彼は以来、敬意を込めて仏語風味で
「ベンジョミン」
と呼ばれている。
めんどくさいときは、
「ベン」
と呼んでいる。
***
もちろん、ただの飲み会でここまでやってしまうのは、大人として失格だという意見もあると思う。事実、トイレを3時間ほど占拠し、店の人にも怒られ、そのあと大量にマーライオンまでしたわけだから、迷惑きわまりない存在であったことは否定できない。
「ベンジョミン」をトイレから引きずり出すのに、僕と同程度の体格の人間が全力で足を引っ張っても、無理だった。吐瀉物は広範に転移しており、どこも触りたくない状況だった。
 
しかし一方で、僕はA氏あらため「ベンジョミン」が出し切る様子を見て、
「さすがやな」
と思ったのであった。いや、思ってしまったと言った方が正しいだろうか。
 
これが、顧客との飲み会でやってしまったのであれば、アウトである。経営者の集まる会でやってしまったのであれば、二度とそのコミュニティに招かれることもあるまい。
しかし、今回は失敗がギリギリ許される社内。しかも男だらけの飲み会。僕は思った。
「ああ、ベンジョミンは、限界の閾値を引き上げようとしたんだ」
と。
 
「ベンジョミン」にとって、今回のカラオケはフィットネストレーニングであり、練習であった。
自分はどこまで翔べるのか。自分の限界はどこなのか。来たるべきときに飛躍すべく、自分の閾値を少しでも上げておく。
その見込みをミスって便所に引きこもることにはなったが、練習でこそ本気を出すという「ベンジョミン」の姿勢に、自らの平生を自省させられた。
 
一流の成果を出す人間は、定期的に自分の限界の閾値を上げる努力をしている。
そんな教訓を経た後に、改めて「ベンジョミン」とカラオケに行ったら、「今日はダメです!」、「もう飲みません!」と、完全に抑えに回ってなんの活躍もしていなかった。
タンバリンを叩くのみで、バリューゼロ。100kmの巨躯でタンバリンを振り回している姿は、異常としか言いようがなかった。
 
こうやって守勢に回ることで、人は退化する。
それも教えてくれた「ベンジョミン」は、もしかして僕らの想像以上にすごい漢なのかもしれない。
***

世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。
退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!
我が生涯に一片の悔いなし!!!
Twitter: @raoukeita
メルマガ希望:kusog.akaba(アットマーク)gmail.comまで。組織の人財育成について書いてます。
いずれも申請の際は、世紀末覇者として最低限の自己紹介と愛のある一言をお願いします。
欲しいものリストはこちらです。万が一くれる人いたら泣いて喜びます。http://amzn.asia/7ZSHn0D

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事