(Source:下町ロケットHP
最近、下町ロケット人気が再燃している。
ここ数年だと「半沢直樹」以来のヒットなんじゃないかと思うけれど、さすがは池井戸潤。ヒットメーカーとしての地位を確立している。「下町ロケット」、「下町ロケット ガウディ計画」、「下町ロケット ゴースト」、「下町ロケット ヤタガラス」の4作が上梓されており、どれも面白い。
日本の事業者の99%を占める中小企業経営者諸氏におかれましては、ぜひ「下町ロケット」をシリーズを網羅して通読することをオススメしたい。テレビでも良いけど、文字の方が描写が多彩で再現性が高い。
「下町ロケット」のストーリーには、中小企業経営の要諦がいくつも含まれており、下記に挙げられるような要素が散りばめられている。
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1、権力者の闇が他山の石となる
「全ての権力は腐敗する」の格言がごとく、この物語にはいい感じに腐った権力者がたくさん出てくる。ちゃんとした経営者は、主人公の佃航平(ドラマだと阿部寛)と他少数の人たちぐらいで、あとはもれなく悪人。
知財戦略のみを駆使し、半ばだまし討ちのような形で合併を迫ってくる競合。職業倫理から逸脱しまくりマクリスティな弁護士。大企業の論理で品質試験の結果を捻じ曲げようとする経営幹部。
復讐心から、全うな道を捨て悪に堕ちていく元天才技術者。数字とリスクしか見ない存在価値のない銀行。部下の上司のもの、上司のミスは部下のものなジャイアン型医者。
揃いも揃って腐っていて、そいつらのせいで襲いかかってくる試練を、佃航平はじめとした佃製作所の面々が打ち破っていく姿が、胸を熱くする。
 
ほとんどの権力者は、若い頃貧しき頃は志高くまともな仕事をしていたはず。また優れていたからこそ、その地位にまでたどり着いたはず。
いつしかその心を忘れ、餓鬼の道とも言うべきダークサイドに堕ちていく人たちが、どのような要素や思考パターンを持っているのか。中小企業の経営者は知っておくべきである。
中小企業は良い意味でも悪い意味でも独裁国家であり、よろしくない方向に独裁が傾いたときは、上場企業のような監視が利かない分、とんでもない事態を引き起こす。
会計事務所や社外取締役などの監視体制があっても色々な不祥事が起きるぐらいだから、閉じた世界のそれは推して知るべし。
人が堕ちるときのパターンを知っておくことは、トップに立つものとしてのマナーだとすら思う。最近、とある経営者の腐りっぷりを耳にすることがあり、その人間の家に「下町ロケット」を送りつけてやりたい気分がムンムンする。
自分のこと?と思ったそこのあなた。そうかもしれません。違うと思うけど。その人間はたぶんこのエントリを読んでない。
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2、人が死ぬ気で働くのはどういうときか?
「ブラック企業」と揶揄されがちなほど、主人公・佃航平が経営する佃製作所の社員たちはよく働く。一流企業の看板もない、給料も良くはない、設備も整ってはいない。それでも社員が全力で働くのは、なぜなんだろう?
ある意味でこれは、中小企業経営者が欲して止まない企業文化の究極系だと思う。「待遇で報いろよ」、「働かせすぎだろ」と外野が言うのは簡単だけれど、高い給料と短い労働時間を評論家たちが言うように保証すれば、中小企業はあっという間に潰れる。
現実世界では、ほのかに香るブラック感と、兵士が戦士と化す環境がある会社は強い。佃製作所は間違いなくそういう会社である。
 
佃製作所にあって、ストーリーに登場する他の会社にないもの、それは、月並みだけれど「経営者の明確なビジョン」である。現実が厳しければ厳しいほど、ビジョンを語るのはどこかむず痒かったり、夢物語に聞こえたりしてきて、おいそれと口にできなくなる。
しかしそれを佃航平はやる。しつこいほど、うざがられるほどに徹底している。ある意味で狂信的なビジョンを持っていて、社員たちはそのわがままに最後は「しょーがねーな、うちの社長は」と半ば諦め気味に、しかし嬉しそうに付き合っている。
 
大黒摩季は、名曲「熱くなれ」のなかで、

未来が見えないと不安になるけど
くっきり見えると怖くなる

と言っていた。この人と将来どうなるんだろうと思ってるときは不安だが、この人と生きていくことが決まったとなると、それもそれで不安だという、女性あるあるの話だと思う。これは恋愛や結婚ではそうなのかもしれない。
 
一方現実では、やっぱり未来は見えていた方が良いと個人的に思う。ただ、未来は「未だ来ていない」から未来と呼ぶのであり、今現在手元にその姿が明確に見えるわけではない。その見えないものを見せるのが、経営者の役割なのである。
ひと昔前のサラリーマンたちが必死に働いたのは、働けば洗濯機やクーラーやテレビや車が手に入るという明確なビジョンがあったからだった。頑張った先に手に入るものが、はっきりくっきりと見えた時代だったのだろう。
今は「働いたら負けですよ」とか、過度に自分らしさを追求して義務すら果たさないエルサみたいな人間が増えているが、これは頑張ったらどうなるのかの明確なビジョンがないから起きる。これはモノが満たされた国や組織に頻出する問題で、今のところ解決策はない。
 
佃製作所には、佃航平が描く強烈なビジョンがある。それに社員たちは引きずられるように傾倒していき、そしていつしか自分自身の夢と重ね合わせていく。ビジョンレスな経営者各位には、ぜひ佃航平を師としていただきたい。
ビジョンがあれば人は頑張れる。それを提供するのが、経営者の役割だ。
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3、人間万事塞翁が馬感が半端ない
「下町ロケット」を、シリーズで通読してほしい理由がこれである。
一冊一冊だけを見ると、「下町ロケット」はハッピーエンドで終わっている。しかしシリーズで見ると、ほぼ必ず「塞翁が馬状態」でストーリーが繋がっている。良かったことが悪かったことに、悪かったことが良かったことにつながっている。
 
例えば、第1作目「下町ロケット」のエンディングで、佃製作所は弱小中小企業ながら、その技術力を生かして日本最大の重厚長大会社・帝国重工への部品納入に成功する。数々の苦難を乗り越えて、ついに日本最強企業に俺たちの部品が採用される!やったー!そこで話は終わる。
しかし、第2作目「下町ロケット ガウディ計画」では、まさにその帝国重工への部品納入が、会社の首を締めるところから話が始まる。
大企業への部品納入に伴い、品質管理体制強化や生産量拡大のための設備投資が嵩み、コストが増大。一方で受注はたったの数年で見直されることになり、より安価な製品をぶっこんでくる競合との苛烈な競争にさらされる。ROIが改善するのがまだまだ先の話という時点で部品納入の話が見直しとなってしまい、一転ピンチに陥る佃製作所。
 
本来勝つべきところではないところで勝ってしまい、逆に苦境に陥った旧日本軍を彷彿とさせるほどの急転直下。これは、「下町ロケット」を1冊だけ読んで「おもしれー」と言ってるだけでは、たどり着けない切り口だと思う。
アップルの増産に付き合った結果、一時の栄華を極めた直後に苦境に陥った部品メーカーなど、中小企業ならではの塞翁が馬感溢れる苦しみを体感できるのが「下町ロケット」。
うまくいくときはうまくいきすぎて裏目に出ないように、下降局面ではその被害がもっとも少なくなるように。経営者としての舵取りをシミュレーションする上で、「下町ロケット」は多くのことを教えてくれる。
 
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