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退かぬ、媚びぬ、省みぬ!我が生涯に一片の悔いなし!!!

おすすめ映画:「女神の見えざる手」 #1475

time 2019/01/29


 

 

(Source:Miss Sloan HP

今まで専門外ゆえに書こうとしてこなかった映画に関するエントリ。

お初は、

「女神の見えざる手」(原題:”Miss Sloan”)

であります。年末ぐらいから結構映画を見ているのだけど、「ミッションインポッシブル」などの諜報モノ好きとしては、かなり上位に来る出来。大して話題になってないのが不思議なぐらい、面白かった。

主演はジェシカ・チャステイン。2012年の「ゼロ・ダーク・サーティ」、2014年の「インターステラー」にも出ている女優さんで、この3作をかなり近い期間で見たにも関わらず、同一人物だとは全く気づかなかった。それぐらい、色々な役になれる人なんじゃないかと思う。

ちなみに「ゼロ・ダーク・サーティ」は9.11を起こしたアルカイダの首領オサマ・ビン・ラディンを追い詰めて殺した際の米軍女性士官の活躍を描いたもの。概要だけ見るとめっちゃ面白そうなのに、2時間半近くに渡って全然盛り上がらず、最後よくわからないままいつのまにかラスボスを始末することになるという、超つまらない映画だった。アカデミー賞にもノミネートされてるのでその筋の人には評価高いのかもしれないけど、僕は全然ダメだった。

一方の「インターステラー」は超面白い。大きな括りで言えばSFであり、滅亡の迫る人類を救うために宇宙へ!という内容のためか「アルマゲドン」や「ディープインパクト」あたりの内容と似ているはずと踏んでいたが、どっこい全然違った。これは素晴らしい作品なのでまた別途エントリに書く予定。

さて本題。もちろんネタバレはします。アマゾンプライムで有料だけど視聴可能。

***

「女神の見えざる手」の概要

「これってなんの映画?」と聞かれたら、「アメリカの豪腕ロビイストの映画です」と答える。そういう映画。

じゃあ「ロビイストって何?」と聞かれると、難しい。日本にロビイストに該当する仕事はないからだ。「私の仕事はコンサルタントです」という人間はいても、「私の仕事はロビイストです」という人間もまずいない。ややこしいので詳細はこちらに譲る。日本語で言うと、「政策を通すために活動する根回し屋」みたいな感じだろうか。なんかかっこ悪い。

 

日本だと市民権のあまりない仕事に対し、きちんと専門性と知名度と名誉があり、ハーバードやプリンストン級の超一流大学を出た人材がこぞって業界入りし、もちろん活動に見合った高給を得られるのがアメリカ流。

たとえば高校・大学スポーツの一流校のコーチは、日本のように「教師業のついで」でやるものであり、「顧問手当が月5000円」みたいなナメた待遇ではなく、きちんとした専門職として高給で迎えられる。日本だと諜報活動は表の軍事活動に対して「ついで」感が満載だが、アメリカではCIAやNSAなどの諜報機関には超一流の人材が集まる。

本作の職業「ロビイスト」もそんな感じで、日本だと根回しは誰かが「ついで」にやるものでそれにお金を払うという感覚はあまりないが、アメリカだとロビーングをやるそれ専門の会社があり、超一流の人材が正々堂々と(?)策謀を巡らせて日夜勢力争いが繰り広げられている。

なお、原題は”Miss Sloan”となっているが、これだと何の映画かわからないので、”The Lobbyist”とかにすればよかったのにと思う。敏腕というよりは豪腕。ラスト30分は必見。

 

本作においてのテーマは、「銃規制強化法案に対する反対」を巡る戦いなので、若干ややこしい。「銃規制強化法案に反対ですか!?賛成ですか!?」と問い詰められると、一瞬頭が働かなくなる。「銃に反対することに反対する」勢力と、「銃に反対することに賛成する」勢力の戦い。頭がこんがらがらないだろうか?

最初、主人公のエリザベス・スローンは「銃規制強化法案を潰したいから協力してくれない?」と持ちかけられる。お相手は500万人の会員を抱える全米ライフル協会と思しき銃擁護派団体のトップ。銃万歳!を叫ぶアメリカの恥部の代表で、しかし莫大な財力と膨大な数の支持者を持つ。

これ以上自由の象徴である銃を規制されたらたまったもんじゃない、ということで、エリザベス・スローンの所属するカネが最優先の大手ロビー会社にロビーイングの依頼をしてきた。特にスローンの力により、「女性が諸手を挙げて銃を賛美する状況」が作られることを望んでおり、銃のイメージを変えてくれと頼む。

 

これに対してスローンは、ちょっとしたすったもんだの末、「じゃやめるわ。銃規制強化法案賛成派に回るわ。」と、チームを率いて小規模だがまともなロビー会社に転職。

カネカネしてる前職大手に比べるとリソースもなく、そもそも敵が超強力ななかで、七転八倒しながら銃規制法案が可決されるように世論に働きかけていくというストーリー。「銃規制強化法案に反対する勢力」から「銃規制法案に賛成する勢力」への鞍替えを序盤でするので、さらにややこしい。

作戦を練り、キャンペーンを張り、討論番組に出演し、と、これでもかというほどのロビー活動を展開していく様は超かっこいい。フェミニズムを嫌うほぼ男然とした美女が躍動する様は結構興奮する。ストレス発散のために男を買うという描写もあり、アメリカのエリートは凄まじいなと思わされる。

 

***

見所1:アメリカ社会の闇

ロビイストという職業にも不慣れならば、銃社会というものにも不慣れな我々日本人。まぁロビイストという仕事が必要であろうことは永田町界隈を見ててもなんとなく想像がつくのだが、特に銃については日本人の感覚からすると全く分からない。

個人的な感想を言わせてもらえれば、銃や核兵器、世界の支配、人種差別というものから離れられないアメリカ人は世界で一番哀れでかわいそうな民族なのだけれど、それに加えて最悪なのがこの銃に関する考え方。

銃を保持する権利は、アメリカ合衆国憲法修正第2条において、

規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を所有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。

と規定されている。イギリスの圧政下からの独立を果たして建国されたという経緯や、広大な土地があるために警察組織を全国的に配備することが困難だった時代の名残から、銃を保持することが合法化されている。

 

現在でも3億丁の銃が存在し、数年に1回はコロンバイン級の乱射事件が起きて悲劇が繰り返されているにも関わらず、未だに全面規制には至っていない。日本だったら乱射事件の一つでも起ころうものなら一瞬で銃が全面禁止されそうなものだが、そうはならず厚い銃への信仰があるアメリカ。

国家の成り立ちによってこれほどまでに主義主張が異なるのだろうかと思うが、どう考えても銃がない方が平和になるのに、本作に出てくる政治家やスローンと反対側のロビーストたちはニコニコしながら「銃って素晴らしいだろ?」と口にする。狂ってる。

このあたりは、明らかに自衛隊が軍隊なのにいまだに軍隊認定しない日本と似ている気がしないでもない。過去と現在は前提も環境も異なるにも関わらず、悪しき伝統が現実を凌駕してしまっている典型例だと思う。

***

見所2:アメリカンエグゼクティブの闇

主人公のエリザベス・スローンは敏腕どころか豪腕ロビイスト。政治家全般から恐れられている。戦略コンサルタントも真っ青のロジカルモンスターで、初めて会った人への自己紹介すらをも省略して作戦会議に入る。とにかく、無駄なことを1ミリもしない。

がしかし、簡単に言えばスローンはドラッグ漬けである。ヘロインコカインほどのハードドラッグではないものの、明らかに気分安定の処方薬の域を出る薬を毎日毎日飲みまくっている。また、前述のように男をカネで買い漁って、ストレス発散をしている。どうやら家庭も彼氏も無駄と考えているようで、ある意味で至極合理的。

これはあくまで映画の世界での話であるが、なんか現実世界にもよく見られる光景な気がする。

たとえばオバマ元大統領は若かりし頃にドラッグ漬けになったことを告白しているし、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクはドラッグはどうだから知らないが、明らかな人格破綻者。

両者がレジェンドたりえるのはその業績ゆえにであって、人格ゆえにではない。日本だったらとっくにパワハラ容疑で送検されてる。神戸の市長の暴言なんて、全然生ぬるい。

 

また、銃を始めとした軍事産業など、誰も幸せにしない産業が一定以上の市民権を得てしまっているのも、アメリカの悲しいところ。政治家やロビイストたちはその最悪の産業に関する話ですら、得意のアメリカ流で美談やヒーロー物語にしたてあげ、大衆に伝播させていく。

ある意味で多様性を担保しているとも言えるし、民主主義が機能しているとも言えるのかもしれないが、明らかに正義がないことについても平気でドカドカと前に進めることができるアメリカンエグゼクティブには、サイコパスが多いと思っている。

日本が大東亜戦争に巻き込まれ、ボコボコにされたのも結局は苛烈な人種差別のゆえである。アメリカは、同じ系統の民族であるドイツには原爆を一発も落としていない。日本はそろそろアメリカの本質に気づくべきであるし、対抗手段を持つべきである。

***

見所3:ラスト30分の大逆転

最後はやっぱりストーリーの話。

これ以上ないネタバレになるので中身は伏せるが、エリザベス・スローンは豪腕がゆえに、また憲法で保証されている武器を保持する権利に対する敵となったがゆえに、有形無形の嫌がらせを受け、結局聴問会で犯罪者扱いされてしまう。

銃規制強化法案に関する戦いと平行して、あれこれやりすぎたスローンに対して上院議員が主催する聴問会でお灸を据える様子が、映画の最初から描かれている。

「お前ドラッグやっただろ」とか「お前男買っただろ」とチクチクやられながら、最後は法律違反まで疑われて土俵際に追い込まれるのだけれど、そこからの肉を斬らせて骨を断つ大逆転劇が痛快そのもの。

日本もアメリカも、結局政治家は当選することと支援団体の利益のことしか考えておらず、ろくなもんじゃないと思わされる作品ではあるが、どこかでちゃんと正義が働くところはこれはこれでアメリカのすごいところ。そういう意味では、日本は正義も悪もどこか中途半端。ま、悪が中途半端なだけよしとしましょう。

 

現場からは以上であります。

面白いのでぜひ一回見てみてくらはい。

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