WOWOWのドラマはいつも面白いと評判なのでありますが、その中でも傑作の誉高い「沈まぬ太陽」が、今ならアマゾンプライムで無料で見られる。全20話と決して短くはないのだけれど、「24」のように無理やりな設定があるわけでもなく、妙に仕込まれた冗長やどんでん返しもないため、最後の方は「もう終わり?」と寂しくなるぐらい、一気通貫で楽しめる。

おすすめなのでレビュー!日産がゴーン事件に湧いている今こそ、大企業の腐敗のあれこれがぐっと詰まった本作を見るべきなのかもしれない。登場人物、一部のまともな人間以外はほぼ全員がカス認定!ちなみに主人公も頑張ってるけどかなりヤバイ人。

(Source:WOWOW HP
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「沈まぬ太陽」のあらすじ

「沈まぬ太陽」の原作は、言わずとしれた山崎豊子の大ヒット作で、累計700万部も売れているという。本人は認めていないが誰がどう見てもJ◯Lをモデルにしており、航空機史上最大の悲劇「日本航空123便墜落事故」や、J◯L内にはびこるグダグダの労組闘争、企業文化の腐敗を描いた作品で、J◯Lは当時本作を連載していた週刊新潮を機内に置かなかったという。

主人公の恩地元を演じるのは、そこじゃないというところにこだわりまくって人生全体を無駄にするグダグダな男の演技をさせたらピカイチの、上川隆也。今回も、鈴木雅之ばりに「違う、そうじゃない」とツッコミたいところが満載な男を演じてくれた。

あらすじはウィキに載っているけれど、複雑すぎてよく分からない人もいると思うので、羅王版概要を載せておきます。なお、主人公は懲罰人事でアフリカ近辺をたらい回しにされるのだが、それはJ◯L内でモデルとなった実在の人物が実際に食らった島流しであります。マジで腐っております。
 

私的編集した独断と偏見に満ちたあらすじ)

✅主人公の恩地元(上川隆也)は、大学時代からのバディ兼ライバルの行天四郎(渡部篤郎)と一緒に、国民航空(モデルはもちろんJ◯L)の労組の委員長、副委員長として会社と切った張ったのやりとりをしていた。当初はやりたくないのに勝手に任命されていたが、やりがいもあり現場からは頼りにもされるため、仕方なく労組委員長就任を受け入れる恩地。不幸な物語がここから始まる。

✅労使協議の議題は主に労働環境の改善。高度経済成長期の典型例よろしく、国民航空ももれなくブラック企業化しており、花形ではないが安全運航に絶対の責任を持つ整備の現場が特に疲弊していた。人員は少なく、休憩はほぼなく、過労死ラインは楽々突破し、ついに事故により人が亡くなる。恩地は猛烈に怒り、至極当然のごとく経営陣に食ってかかる。通常労組委員長は出世ポストのため、経営陣となぁなぁで終えるのが流儀。しかし正義感の塊の恩地にはそれができず、ひたすら正義を追求して衝突しまくりマクリスティ。

✅しかし、慢性的な大企業病に脳の髄まで侵されている国民航空の経営陣は、現場を見ようともしないし改善も先延ばしのまま。経費使いまくり遊びまくりで、無能の代表格のような経営陣になんとか危機意識を持たせるべく、恩地は行天と相談し、首相フライト(首相が国民航空の飛行機に乗る便)の日にストを決行。最初は脅しのつもりだったが、なんだかんだの連絡行き違いの末、実際に首相がフライトする日にストになってしまい、経営陣の逆鱗に触れる。経営陣が腐っていると、絶対に会社はよくならない。

✅ここで運命の分かれ道。他責思考しかない労組委員長の恩地はパキスタンに飛ばされることになるが、副委員長の行天は腐った経営陣に忠誠を誓うことにより、むしろ出世街道を爆走することになる。「共に国民航空を変えよう!」と誓い合ったバディが、ここで別々の道を歩むことになる。自分の生活のことしか考えない行天の嫁があまりにアレで、現代風に言うと「嫁ブロック」を食らった行天は、正義よりも実利を取る方針に転換。以後完全に理想を失い、権力に媚びるヒラメと化す。散々ディスったけど、自分の家のことしか考えない行天の嫁は、個別の生存戦略としては全く共感はできないけど残念ながら正しい。

一方の恩地嫁は本当にかわいそう。苛烈な労働を課される労組委員長すら、1年の約束がなんだかんだと2年になり、献身的に支え続けるも、今度は旦那がやりすぎてパキスタンに飛ばされる。さらに、会社に謝れないし転職もできない亭主を持ったおかげで、以後慣れない海外暮らし何年も強いられることに。現代風に言えばどこかで離婚の一手という結論になるのだろうけど、専業主婦の恩地嫁はそれもできない。たまに不平不満は言う(当たり前)が、ずっと献身的に支え続ける恩地嫁はこの物語のMVP。子供がグレなかったのもこの人のおかげ。専業主婦は旦那の収入に依存してしまうため、リスクが全く取れないという貴重な学びも得られるのが本作。

✅最初ほんのちょっとで戻すと経営陣に約束されていたものの、パキスタンのカラチからイランのテヘラン、そしてケニアのナイロビに飛ばされる恩地。経営陣からの「もう少しもう少し詐欺」に遭い、足かけ10年間の海外途上国への左遷を食らうことになる。途中で何度か本来の路線に戻る手段もあった(会社にちょっとだけ謝るとか)が、意固地なためはねのける始末。狩りのやりすぎや孤独に苛まれすぎて、途中で本人の人格も変わってしまい、一体何のために戦っているのかが本人にすら分からなくなってしまう。会社の「もうすぐこうしてあげるから」はレンジが長くなればなるほど信用してはいけない。昇給にしろ昇格にしろ、今決断させて手に入れること。じゃないと役職者が変わればすぐに反故にされる。

✅10年の左遷を経てようやく日本に戻った頃、別の道を行ったはずの行天はとっくに取締役になっていた。会うたびに偉そうにする行天。日本に戻った恩地の味方はほとんど生き残っておらず、ほとんど左遷されて終わっていた。昇格を約束されて服役したのに、刑務所から出てきたら組が解散してたみたいな感じ。・・・なんて暇もなく、御巣鷹山で墜落事故が発生。これは史実にあった「日本航空123便墜落事故」をまんまモチーフにしており、凄惨を極める。史実ではボーイングの修理ミスが原因なのだが、史実でも本作でもアメリカは自分のミスを認めない。恩地は遺族相談係に任命される。

✅ここまでの事故を起こしてなお、現場に全く足を運ばない経営陣。10年経っても何も変わっていない。現場(恩地とか)に遺族対応を任せ、自分たちはひたすら権力を味わい尽くすことに邁進する。その中には残念ながら行天もいた。下劣極まりない他の経営陣とは少し趣が異なり、「上品なまま腐っていく」という稀有な姿を見せる行天。取締役、常務取締役と順調に昇進を重ねていくも、当時の志はどこへやら。そして相変わらずの対恩地マウンティング。SAM(すき・あらば・マウンティング)のプロになっていく。汚い手段を使って権力を握って、そこから聖なる人間になろうとしてもまず無理であることが立証される。

✅罵声を浴びまくるも、遺族からは信頼されまくる恩地。その無骨で真摯な姿勢は、遺族の悲しみに暮れた心すら打つ。一方、相変わらず腐っている国民航空経営陣に、ついに色々メスが入り始める。週刊誌により、恩地が懲罰人事を10年間も食らっていたことが暴露されたり、財務体質が真っ赤っかであることが明らかになったり、経営陣の背任行為もバレ始めた。結局行天も最後は逮捕され、ジ・エンド。最初から最後まで会社のことも安全運行のことも差し置いて自分の生活水準を守ることしか考えなかった行天嫁の一貫性に拍手。どういう人間を配偶者にするのか、はめちゃくちゃ大事だ。

✅最後に、経営陣が軒並み逮捕されて、よっしゃついに俺の時代かと思った矢先、再びアフリカに飛ばされることが決まった恩地。ここでドラマが終了。完全なるアンハッピーエンド。どうでも良いけど、イントロと最後に流れるアフリカンな音楽がとってもカッコ良いので毎回飛ばさずに観てしまった。最初から最後まで一切報われることなく、家族にも迷惑をかけまくって、結局会社を変えることもできなかった恩地元。この歯切れの悪さは一体なんなのだろうか。史実の会社が潰れたのもうなづける腐り具合だった。
 
以上があらすじ。大企業病とはここまで醜いものなのかと、怒りながら観ていた。最初から最後まで一貫して面白いのだが、1ミリも主人公に感情移入できないところもまた、このドラマの不思議なところであったと思う。

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主人公に1ミリも感情移入できなかった理由

正確には労組委員長として真の安全運航実現のために頑張っていた頃の主人公・恩地のことはとっても応援していたのだけれど、パキスタンのカラチに飛ばされて以降の恩地には全く共感も感情移入することもできなかった。これは、1つは時代背景が今と違うことから来ており、もう1つは恩地が真面目で一徹ではあるが、「目的を忘れて不毛な戦いを続ける、戦略なき漢」であったからだと思う。

本作が今起きている話であれば、労組委員長として安全運航の実現のために戦ってパキスタンに飛ばされたら、「労働環境改善しようとして経営陣にまっとうな要求をしたら、カラチに飛ばされたなう。」とかツイートすれば良い。共産党は喜んで助けてくれるだろう。

また、イランやケニアでは、「パキスタンの貧困状況」とか、「ここがツライよイランの経済制裁」とかについてnoteやブログで書けば、めちゃくちゃアクセスが高まったはず。アルファブロガーになって会社を超える影響力を持つこともできたかもしれない。会社もおいそれと解雇できないだろうし、むしろその影響力を使って会社のイメージアップを図ろうと問題点を解決する姿勢を見せるだろう。

「会社を良くしようとしたら10年間パキスタン、イラン、ケニアに飛ばされて、日本に戻ってきても閑職に回され、再度またアフリカに飛ばされた元労組委員長のブログ」とか開設してたら、僕なら絶対に読む。
 

また、それだけのキャリアを持っていたならば「途上国における海外支店立ち上げの専門家」としても独り立ちできただろうし、他のキャリアからも引く手あまたなはずだ。そもそも国民航空は日本のフラッグシップキャリアなのだから、多少の条件ダウンを飲めばどの企業からも来て欲しいに違いない。何も、途上国で10年も我慢する必要はなかった。

転職はありえないという思考がどこかにあったため、結果として太陽(=国民航空)は沈まず、沈んだのは恩地一家だけになってしまった。当時は転職自体はできたかもしれないけれど、まだまだ終身雇用が当たり前だった時代である。その時代の閉ざされた常識に対する嫌悪感も、感情移入できない理由だった。選択肢が実際はあることと、その選択肢を採れることは全然違う。多くの人が離婚できるのにできない、ダメ彼氏と別れたいのに別れられない、というのと一緒だ。
 

恩地が、「目的を忘れて不毛な戦いを続ける、戦略なき漢」であったという点に関しては、ドラマ全体を通じてイライラした。当初戦っていた目的は、安全運航の実現、そしてその最初のステップとして主に整備職員の労働環境の改善、そしていつかは誇れる国民航空へ!これが命を賭して戦う理由だったはず。

断っておくと、僕は大きな時間を使う仕事や会社に対する愛は完全肯定派で、「9時5時で働いてあとはプライベートだからさいならー。仕事?え?カネもらえるからやるだけっしょ?」という考え方には全く賛成しない人である。仕事は誇りを持ってやるべきだし、健全な愛社精神はあった方が絶対に良いと思っている。もちろん、愛するに足る会社であることが前提ではあるけれど、手がかかる子ほど可愛いのと一緒で、色々問題はあれど国民航空を愛している、という恩地の姿勢は、全然おっけーだという派であります。

がしかし、恩地の良くないところは、状況が変わったにも関わらず、戦い方を一切変えないところ。最後の方は奇跡的にメディアや検察のメスが入ることにより、会社が強制的に外圧で変化する局面に至ることもあったが、基本的に恩地が能動的に打った手で実ったものは一つもない。というか、恩地は能動的に手を打つという行動すらしていない。ただひたすら耐えているだけである。

「会社のこんな仕打ちは許せないが、俺が耐えていればいつかは状況が好転するはず・・・」と信じていたのかどうかは知らないが、途上国の支店に飛ばされ、現地人とのやりとりや信頼醸成のコストに仕事のほとんどを割かねばならない人間がまともな職歴を積めるはずもなく、時間が経てば経つほど戦うためのリソースが低減していくということに、気づいていなかったのだろうか。ずーっと竹槍で爆撃機をつつくような戦い方しかしていなかった恩地は、確かに真面目で誠実に頑張っていたが、しかしある意味で無能だったのではと思う。

 

その意味では、さっさと鞍替えして、「まずは権力を」とヒラメ路線に転化した元バディの行天の戦略は正しい。しかし彼の場合は途中で汚いことをやりすぎて、いざ権力を握った時には、周りが口を開けた鵜だらけになっていた点が、失敗だった。

それまで甘い餌を与えられていた鵜たちは、もし行天が変節して清貧を貫くようになると、途端に牙を向く。畢竟、行天は引き続き汚いことを続ける以外の選択肢を持たなかった。清く行くなら最初から行かないと、最後の方でなんとかしようというのは、無理ゲー。これはどうやら古今東西を問わず同じのようである。

恩地は、不当な転勤についてバンバンメディアを活用すべきであったし、会社にかろうじて残っているであろう良心を体現する役員と懇意にすべきであったし、毒を喰らわば的に共産党と手を結んでもよかったし、とりあえず平謝りして本社で権力を握るべきであった。まぁ色々やれたことはあるはず。

なのに、竹槍持って防空壕にこもっていつか助かるはずと信じていた恩地は、ちょっとイタイ。真面目に頑張っていれば報われるのは、正しい戦略を採っている時だけである。
 

最後に、カスキャラ本作の中でもトップクラスにカス認定したい女であった、行天の嫁。一貫性があるという点では主人公の恩地とタメを張るが、「安全運航を実現して国民航空を誇れる会社にする」という目的を忘れて誰と何について戦っているかもわからなくなった恩地とは異なり、首尾一貫して「自分の生活レベルとステータスを守る」ということに全力を注いだ行天嫁は、それはそれで賞賛に値する。

個人的に自分のことしか考えない専業主婦にイヤな思い出を持つ身としては、めちゃめちゃ嫌悪感を感じながらも「そうそうそう!君たちはそれでこそそうなんだよ!」となんだか得心しながら観てしまった。
こちらご参考。全て実話です。ぶったまげた。

カスだらけのキャラクターに、腐敗しまくりの大企業。ネバネバとまとわりつく不快な湿気に包まれた本作の中での唯一の清涼剤は、意味なく出演回数の多い檀れいの美人度。「沈まぬ太陽」、おすすめだす。

「あらゆる権力は腐敗する」

の格言の意味が本当によくわかる逸品。

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世知辛い世紀末にこのエントリを読んでいただいたことを感謝します。
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