最近習慣化しつつある毎週土日の恒例行事と言えば、早朝トレーニング。
朝6時に何らかの場所に集合し、がっつりトレーニングして8時頃には解散して土日を満喫するというのがお決まりのパターン。平素は皇居でやっており、しかしながらしょっちゅう寝坊者が出て開催自体されないこともしばしば。というか昨日は僕が寝坊してしまった。習慣化への道はかくも遠い。
その代わりと言ってはなんだけど、一昨日は一応ちゃんとトレーニングをすることができた。名古屋から友人が来てミーティングしようとのことで、いつも通り「じゃあ朝6時で」とオファーすると、「御意」と一瞬で決まる。この何も考えずにボタンを押す感じが心地良い。
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トレーニング内容
この日はわりと軽めのトレーニング。ミーティングをしながらなので、息が上がらない程度にキロ7分程度でこちょこちょ走る。あまりキツイトレーニングをすると友人がもう来てくれなくなりそうなので、ゲストをもてなす意味でいくつかの工夫をこらす。用意したメニューはこちら。
✅キロ7分程度で豊洲〜お台場を7km走る
✅ビルの階段を高層階から1階まで「降りる」
✅腕立て200回ほどのインターバルトレーニング
✅痛めつけた上半身のためにタンパク質を豊洲市場で補給
かなり軽めに用意したトレーニングのはずが、仕事と子育てでいっぱいいっぱいだったという友人は腕立てのパートで死に体に。早朝のお台場の海がよく映える絵面となった。なお、最近の日本人はインスタ映えすることを「ばえるわぁ〜」と言うらしい。僕はまだ使いこなせていない。
その後、豊洲市場を見学して、タンパク質を補給した。ここでなかなかに衝撃的な場面に遭遇した。
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豊洲市場、めちゃ空いてるけど大丈夫!?
大胸筋(「アンディ:右」と「フランク:左」)と上腕(「クリスティアーノ:右」と「ロナウド:左」)のために選んだのは、まぐろさけぶりのぶつ切り丼。この界隈では比較的安価な1800円というお値段ながら、大満足の味であった。ちなみに、筋肉に名前をつけると愛おしくなるのでおすすめ。なお、下腿は「スティーブン:右」と「セガール:左)」と呼んでいる。
これはこれで大満足だったのだけれど、気になったのは豊洲市場の混み具合。早朝とはいえ、土曜の掻き入れどきなのにも関わらず、人があまりいない。
いくつかの店舗には、人が一人も並んでいない。
かろうじて人が並んでる店もあったけれど、ここともう1店舗ぐらいしかなかった。
昨年10月にオープンし、「築地の後継者はどないな感じやねん!」と注目を浴びていたはずの豊洲市場。事実、数ヶ月前に同じく早朝に来たときはどの店も混雑しており、最低でも20−30分は並ばねばならなかった。それがたった数ヶ月でこの有様。
まじで大丈夫?
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豊洲市場には、「体温」がない
家からまぁまぁ近いので物見遊山に数回通ってみた感想を言うと、豊洲市場からは「体温」が感じられない。これが豊洲市場が築地ほどの賑わいを持てない一番の理由なのではないだろうか。初訪はする。でも再訪したいとはあまり、というか全然思えない。なんじゃこれ。
体温が感じられないと思ったポイントとしては、
✅ご飯処が、「豊洲市場という日本最大級の魚市場のうちの一部」ではなく、「ただの寿司屋が並ぶショッピングモール」と化している。
✅市場との距離が絶望的に遠い。出来立てほやほやの建物が市場と食事処の間の壁を厚くしている気がする。市場に来ている気が全くしない。
✅市場の見学はできなくはないが、ガラス張りで上から見るのみ。益荒男たちの声も全く届かず、超絶つまらない。貸切のディズニーランドで係員の案内で決められたルートを歩いている感じ。ディズニーならまだ楽しいが。
✅建物の中にはプロ御用達の用品店(包丁屋とか)もあるが、誰も客がいない。そして僕らは素人なので、物珍しいけれども買おうとは思わない。
✅というわけで、お魚も見えずお魚臭さも嗅げずおっさんたちの熱狂もなくただただ整然とした何らかの区の施設に成り下がっている。
✅というわけで、ただの寿司モールにしてはかなりの高額チャージの店が並ぶので、これなら築地に食べに行った方がはるかに趣がある。
✅というわけで、初訪した客がわざわざもう1度来ようと思うような場所では全くなく、そろそろそういう噂が立ち上り始めたので客が減ったのじゃなかろうか。
といった感じ。僕のようにたまたま遠からずな場所に住んでいれば社会科見学に行こうと思えるが、そうでなければ築地の方が今でも100倍は楽しい。我が家では年末年始に食べる魚を買いに12月末に築地に買い出しに行く習性があるのだけれど、今後もこれは築地に出張るしかないなと思わされた。
確かに、豊洲市場は魚市場としての「機能」は果たしている。広大な敷地に清潔な環境、整備された導線、様々な安全対策、おそらくは最新の冷凍設備などなど。機能の面からすれば築地とは比較にならないほど優れている。大枚叩いて建てただけのことはある。
しかし、「体温」の面からすると全然ダメ。体温とはすなわち文化であり、そこに何か表面上の機能以上のものが見感じられるかというと、それがない。築地はごちゃごちゃしていたがそれは確かに文化であり、色々な問題はありながらも間違いなく日本を代表する観光名所であり、パワースポットだった。豊洲市場がそうなる予感は今の所全くない。外国人観光客のみなさん、わざわざ来てくれたのにごめんよ。
その代わりと言ってはなんだけど、どうやら築地が再度注目されているらしい。
もちろん、市場の運営がメインで、そこを観光しに来る人間は二の次だというならそれはそれで仕方ないけど、築地の場合はそこを運営する人間も、そこを訪れる客も、等しく場を味わうことができていた。それと比べるとあまりにもお客さん然として寂しい限り。
小池さん、市場から観光を捨てたら長続きしないと個人的には思いますですよ。
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「機能の充実」だけでは通用しない時代になってきた
この豊洲市場での経験は、世の趨勢を反映しているとも言える。もはや、「機能の充実」だけで顧客を惹きつけることができる時代ではなくなった。
少し前に、国産スマホがこの憂き目に遭った。機能面だけで言えばiPhoneを凌ぐ(iPhoneは上陸当初、様々な機能不足で全然ダメじゃんと言われていた)機種を揃えていたにも関わらず、電機連が束になっても叶わないほどアップルとの間に水を空けられてしまった。顧客は機能ではなく、iPhoneから感じられる「体温」あるいは「文化」の方を選択した。
この時代に「まずい店」は姿を消しつつある。どこの店も、腹を満たすだけであればそこそこ美味しいものを提供するようになっている。しかし綺麗な店内、整備されたWi-Fi、豊富なメニューを揃えている店が有利かと思いきや、人は何かが足りない店であったり、過剰なまでに一つの商品にこだわりぬく店であったり、店主の指がスープに少し入っている店(ラーメン◯郎)の方を好むことも多い。
スマホと同じ構図がここでも繰り広げられている。どうみても大手の方が商品もパンフレットもシステムもしっかりしているのに、昔と比べてスモールビジネスに携わる人間が成果を出しやすい時代が訪れている。
これは、大手では数千人の人間が醸し出す「体温」や「文化」を標準化しにくいのと異なり、スモールビジネスではネットのおかげもあってそれを格段に前面に押し出しやすくなっているからである。かく言う僕も、スーパー零細のくせに業界大手になぜかコンペで勝ってしまったことがあり、勝因が「あなたのイズムです」と言われたことがある。なんじゃそりゃ。
豊洲市場には、魚市場としては欠けているものはないのかもしれない。おじさんたちは以前より混雑せず、計算され尽くしたロジを満喫していることだろう。それはそれで市場の移転が第一目的なのだから、過不足ないのかもしれない。大量に押し寄せる客が邪魔だっただろうし。僕みたいな幅を取るヤツとか。。
しかし築地が持っていた特徴、すなわち文化の集積地やアミューズメントパークとして見ると、言葉を選ばず言えばゼロ点である。このままだと築地に再移転しようみたいな話が持ち上がりかねない。そしてまた膨大な予算が注ぎ込まれていく。
豊洲市場を面白くするには、機能の充実ではない部分に着目する必要がある。訪れる人にどんな経験を提供するか。どんな思い出を作ってさし上げるのか。家族連れにはどんな体験を、カッポーにはどんなサプライズを。そういう顧客目線が一番大事なのだと、誰か意見しなかったんかい!!!と一人憤っておりまする。
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