※本シリーズは、日本一易しい「弱者のための野辺山ウルトラ完走マニュアル」である。とにかくどんなタイムでも良いから完走したい!という人は参考にしてほしい。

※レース中に声をかけてくださった方、FB申請お待ちしてます。レース中は余裕がなく失礼しました。

(前回までのあらすじ)俺という知勇備えた人格者と、最高純度のサイコパスであるプリンス海老澤によって設立された、チーム・プロージットとチーム・サムライ魂。これみよがしに派手なTシャツで統一し、しかしその存在感に全くそぐわないギリギリの実力で野辺山入りを果たした。説明会を終え、前夜祭で歓待を受け、そして宿へ。あとたったの10時間程度で、人生でそうは出逢うことのない、過酷な戦いが始まる。

 

(過去のレース記録、今回のチームのキャラ紹介はこちら)

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健康と美容のために、食後に一杯の紅茶

早くレース本番の記事を書け!、自分は野辺山の攻略法が読みたいんだ!と思われる読者の方も多いかもしれないが、飲みかけのカプチーノをそのおしゃれなデスクに置いて、ちょっとだけ待ってほしい。

遠足は、公園で遊ぶことだけが遠足なんじゃない。行きも遠足なんだ。

前置きなくいきなり犯人が分かるサスペンスを見て、面白いか?

ワンピースは、最後まで「ワンピース(=最後の秘宝)」が何のことか分からないから面白いんだ。

1巻目で桜木花道がジャンプシュートをマスターして、湘北が山王工業を倒したら、つまらない。

そうだろ?

そういうことだ。

 

レース本番は、はっきり言ってツライことしかない。スタートしてからゴールまでの、99.9%はツライ行程だ。もちろん、レース序盤は景色が綺麗だったり、後半にボランティアのおばちゃんたちのあたたかさに感動したりもするのだけれど、中盤以降はそれをはるかにしのぐほどの苦しみと向き合い続けることになる。

普通に生活していて、冗談ぽく「死にたいわー」ぐらいテンションが低くなるのはまだしも、「誰か殺してくれ!」、「俺の息の根をそれと分からないように止めてくれ!」、「隕石!落ちるなら今だろが!ナウナウ!」と思うほど苦しみ、追い詰められることってあるだろうか?たぶん、ない。そして、そんな極限状態を14時間に渡って全身で受け止め続けることになるのが、野辺山ウルトラだ。

そんな苦しい苦しい言ってるだけのブログを、誰が読みたいと思うんだろうか?良い子のみんなは知っておいてほしい。大事なのは、本番だけじゃない。価値を生むのは、前置きだ。ワインだって、味や香りでみんなが満足してるんじゃない。付随する物語を飲んでるんだ。

 

・・・なんだと?

忙しくて前置きを楽しむ余裕がない?

そうか、名作「24」をアマゾンプライムで24時間ぶっ続けで見る余裕がないのなら、それは間違いなく働きすぎだ。シーズン1からシーズン5を5日間で全部見きるぐらいの時間の余裕が普段から持ててないならば、勤め先に過労死ラインで働かされてますけども!と、労基署に駆け込んだ方が良いかもしれない。

そんな多忙過ぎる貴方のために、本論に入る前にのちょっとしたアフタヌーンティーをプレゼントしたい。我が強敵(とも)・プリンス海老澤の「サイコパス列伝」について、追記しておこうと思う。前回のエントリを書いてから、たった1日やそこらで10人ぐらいの知人友人から、「この人、マジでヤバくないですか?」、「サイコパス、半端ないっすね!」、「他の列伝はどんな列伝なんですか?」といった感じの感想が届いた。

盛ってないし、装飾もしていない。実在の人物の話だし、書かれていることは全て事実である。皆さんも、身近にいるサイコパスを見極めて災厄から逃れるためには、典型的なエピソードのいくつかは頭の片隅にでも置いておくと良いかもしれない。。一杯の紅茶代わりに、ご紹介。

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プリンス海老澤は、貴族生まれ貴族育ち、すなわち典型的な貴族である。「3高(高身長、高学歴、高温多湿)」を誇り、一時期は名刺代わりにベンツを配っていたほどである。だから、春の季節に道端に咲いている桜を見ると、

「ああ、これ、うちの庭園に咲いてるのと同じですね」

と言って写真を撮ったりする。一般の男性が絶対に撮らない構図の写真なのがお判りだろうか?どこがどうと具体的には言えないのだけれど、なんか感覚そのものが俺たち庶民とは違う。なぜ自撮りなんだ?なぜ一人で撮るんだ?その手はなんだ?色々突っ込みたいところはあっても、そっと胸に閉まっておくしかない。

 

それはともかくとして、最近、なかなかに衝撃を受けたプリンス海老澤との会話があった。ある日電話がかかってきた時のことであった。(注:最初の挨拶はチーム名であるが、そもそもは名著「銀河英雄伝説」において乾杯の挨拶の際に交わされる掛け声である。プリンス海老澤はこの掛け声をなぜかランとは関係ない社員にも、そしてもちろんチームにも強要する。)

 

プロージット! 
 
 
 
  
 

プ、プロージット! 
 
 
 
 
 
  

再来週の土日は空いてますか?空いてますよね? 
 
 
 
 
 
 

スケジュール見ないとわかんねーよ。。。
 
  

とりあえず土曜の朝6時にココに集合にしようと思いますんで、よろしくお願いします!
 
 

ちょ、ちょっと待ってください、プリンス。子供のイベントがあるかもだし、家の予定を確認しますんで、今日明日時間ください。少々お待ちを!
 
 
 
おっけーです!お待ちしてますね!
わずか5分後・・・。

プロージット!予定は分かりましたか?空いてますよね?

頭のネジはドコデスカ・・・?
実際に、こういうやりとりが月に1回ぐらい発生している。
さらに、こういうこともあった。

いやー、監督、ほんっとに僕はみんなという存在が大切なんですね。ウチを社会の未来に資する100年続く会社に、プロージットもサムライ魂も、一人一人が全力を出し切って自分の無限の可能性に気づける場にしたい!心の底からそう思います!
 
 
 

素晴らしいですね!私もほんとそう思います。未来のために、日本のために!頑張りましょう!一緒にやってきましょう!
 
アルコールがかなり入ったと思われるある日の深夜に、こちらがクソ忙しいのにかかってきた電話。

プロージッツ!今大丈夫れぇすかー? 
 
 
 

(大丈夫じゃないけど)大丈夫です。
 
 
ですよね!いやー、たまに思うんですけどねぇ。
 
 

改まって、どうしたんですか?
 
 

監督も、たまにみんないなくなればいいのにって思いません?
 
 

は?なにその全盛期の魔人ブウみたいな発言???
 
 

いやだってね、僕がもし死んだら、世の中とのつながりが切れるわけだから、もう世界のことなんてどうでもいいじゃないですか?
 
 

あれ?社員は?チームは?家族は?
 

僕がいない世界なんて、意味なくないですか?監督もそう思いませんか?思いますよね?
 

お前を蝋人形にしてやろうか?
繰り返すけれど、実話である。俺自身、自分の耳がおかしいのかと思って何度も自問自答したが、上記のやりとりは実際に行われたものであることは記憶の限り間違いない。高純度のサイコパスとは、我々一般人から見ると、かくもねじれの位置の精神構造をしている生き物であるということは、ご理解いただけただろうか? 
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上記は、単なる個別具体のいちサイコパスの事例である。もちろん個体差はあるが、全体としての傾向もあるのでその性質は自衛のためにも知っておいた方が良い。

相手がどんなサイコパスであれ、サイコパス種の人類と対峙した際には、「たたかう」のコマンドを選んではいけない。「ガンガンいこうぜ」と攻撃的に行くのはもとより、「いのちだいじに」とディフェンシブに戦うのもいけない。選んで良いコマンドは、「にげる」一択だ。特に、夫(妻)、義父(義母)、上司など、パワーバランスがあちらの方が上というポジションにサイコパスが配置されると、人生が詰む。

 

「そんなことないですよ、わりと大丈夫ですよ」と思った人がいたら挙手!甘い。サイコパスは、よほどの低脳未熟大学出身とかでなければ、基本的に目の前にいる貴方より、よほど優秀である場合が多い。それはビジネス面においてだったり、人間関係においてだったり、大きく括れば生物としての生存戦略だったりと、一般の人を大きく凌駕する能力を持つ。だから、たぶん普通に勝てない。

そしてそれは、そのサイコパスがトータルで人間として優れていることを意味しない。あくまで一面における能力が秀でているのであって、その代わりに彼らは他者に対する共感性、弱者に対する配慮、自分と異なる意見を持つ人間に対する理解を欠いており、そしてだいたいの場合は40代以降に髪の毛か家庭を失う。

スティーブ・ジョブズも、スティーブ・バルマーも、ジェフ・ベゾスも、孫正義も最高品質のサイコパスであり、そして彼らは全員ハゲである。サイコパスは犯罪者、というのはほんの一部の例外であり、多くのサイコパスは非常に優秀なビジネスパーソンであって、実業界のそこかしこに生息して大きな成果を挙げている。そしてその足元には、彼らに夢を見させられ、倒れるまで働かされ、そして朽ちていった屍たちが鎮座している。

プリンス海老澤もone of themであり、将来はぜひハゲてほしいと個人的には思っている。

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決戦前夜

さて、アフタヌーンティが終わったところで、そろそろ本題に入りたい。前日の宿は、とっても素敵なロッジにチーム全員で泊まることになった。

 

補給物質の確認を行う。野辺山ウルトラは、42kmの「八峰の湯」と71kmの「滝見の湯」というビッグエイドに、着替えや補給物質などの荷物を置くことができる。

俺レベルのランナーでは、42kmのエイドで一息つく暇はない。なので、この数年は42kmエイドには何も置かず、その分を持って走っている。71kmエイドまで初期の装備でなんとか頑張り、それ以降の分は71kmエイドに預けた荷物から補充。具体的には以下。

 

(〜71kmの初期装備)
・エナジージェル6本(10kmに1本、うちカフェイン入り2本)
・アミノ酸メダリスト3袋
・マグオン(攣り防止用マグネシウムジェル)2つ
・ヴェスパ1つ(ハチのように長時間動けるらしい)
・塩タブレット
・ロキソニン6錠
・ストッパ(下痢止め)6錠
・胃薬
・ヘパリーゼ
・超サイヤ人になれるジェル1本

 

(71kmで補充する物資一覧)
・エナジージェル3本
・アミノ酸メダリスト2袋
・マグオン(攣り防止用マグネシウムジェル)1つ
・ヴェスパ1つ
・ハッピーターン(甘いジェルばかりなので塩味が重宝)
・金のミルク飴
・歯ブラシ(極限状態での気晴らし力半端なし!)
・超サイヤ人になれるジェル2本

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少し補足が必要な、「超サイヤ人になれるジェル」について触れておこうと思う。非常にオススメであり、また副作用満載の劇薬でもあるのがこちら。

 

2017年の野辺山で「これ飲むと、30分だけ超サイヤ人になれますよー!」と言われて思わず買ってしまったのが最初の出会い。売り場でも、これ見よがしに超サイヤ人との関連性がアピールされている。

しきりに「30分!」を強調するので、「ちなみに30分経つとどうなるんですか?」と質問してみたら、その解は、

「廃人になります」

とのことだった。ベジータさんに界王拳4倍を放った後の悟空のようになるということだ。仕組みとしては、摂取と同時に体内の糖質を全部燃やしてエネルギーにし、しばしのエンペラータイムを提供した反動で、ペンペン草も生えないほどエネルギーがカラッカラになるらしい。

(Source:ドラゴンボール)

 

実際、俺も2017年の野辺山でこの超サイヤ人ジェルを使った。トレーニング不足から、ラスト30分ではなく、残り5時間近くも残っている72km地点で使ってしまった。そして効果効能に書かれている通り、本当に30分だけそれまでがウソのように超サイヤ人になることができ、その後山道で登りながら意識が遠のいて気絶した。

79km関門のわずか1km手前、78kmで意識朦朧となっているところを回収バスに拾われ、その年の野辺山ウルトラは終わりを告げた。超サイヤ人ジェル、ハンパないって!その超サイヤ人ジェルを、今回は3本装備していく。大丈夫、本当の勝負所でしか使わない。

いざとなったら、廃人のまま走り続けてやる。

 

窓の外を見ると、オガワタクミがタバコをスパスパと吸っていた。「ブレない」というのはこういう漢のことを言うのだろうか。

喫煙者には天動説の人間がとても多く、いくら受動喫煙や肺がんのリスクを説明しても、「だって、うちのじいちゃんは大酒飲みでヘビースモーカーだったけど、90歳まで生きましたよ!」と反論してきたりする。統計と確率を知らない貴様らは名著「ファクトフルネス」を嫁。

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決戦の朝

21時に寝て、2時過ぎに起きて、2時半から朝食、3時半に宿を出ることにした。外資系エグゼクティブもびっくりの超朝方スタイルが、超長距離レースの特徴だ。

唯一、「飼い馬の厩舎のマネジメントが忙しい」とかなんとかわけのわからない言い訳をして遅刻してきた大富豪てっしーが、22時過ぎに到着。おそらく2時間程度しか寝られなかったのではないだろうか。

 

起床後、腹は全く減ってないけども朝飯をバクバク食べる。お好み焼きを半分と、餅を2個、そしてお菓子を少々。餅にふりかけをかけると、結構美味い。

 

前日、完璧にもほどがある俺のブリーフィングを受けていないてっしーが、プリンス海老澤からレクチャーを受けている。ハンカチ持った?ティッシュは?水筒は?みたいな感じで、小学生のようだ。立っているのは、関係がなくてもあらゆるトークに口を挟んでくるマッキー。早朝なのに声がデカイ。

 

4時に現地に到着し、5時、そして5時20分の2組に分かれたスタートを待つ。さぁ、いよいよ決戦だ。

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退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!
我が生涯に一片の悔いなし!!!

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