※本シリーズは、日本一易しい「弱者のための野辺山ウルトラ完走マニュアル」である。とにかくどんなタイムでも良いから完走したい!という人は参考にしてほしい。

※レース中に声をかけてくださった方、FB申請お待ちしてます。レース中は余裕がなく失礼しました。

(前回までのあらすじ)さぁ、準備は整った。2時半に起き、3時半に出発。朝飯もたっぷり食べたし、準備は万端だ。唯一心配なのは体調不良で2ヶ月寝込んだことによる体力不足だが、それは仕方ない。やれることは全てやった。あとは、出し切るだけだ。実力もうんこも。。。

(過去のレース記録、今回のチームのキャラ紹介はこちら)

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出走!

3時半に宿を出て、4時に現地に着いた。毎回野辺山に来るたびに、暗闇に光るこのゴールゲートを写真に撮り、完走を誓う。99.9999%ツライレースではあるけれども、このゲートをくぐった瞬間にすべてが報われることはわかっている。あとは、やると決めたことをやるだけだ。

 

参加した17人全員で、出走前の儀式。左からマッキー、プリンス海老澤、ティノ、J、スバル、シンジ、ゼッキー、ポン・コツ西、俺と股下で蠢くGを挟んで、クロちゃん、てっしー、小アンディ、オガワタクミ、大アンディ、ビル、コソと並ぶ。

思えば、遠くまで来たものだ。こいつら、ちょっと前まで全員ど素人だったんだぜ?でもどうせなら、全員でゴールゲートをくぐりたい。

 

荷物を預ける。42km地点と71km地点の大エイドに荷物を預けることのできる本レース。俺のような弱小ランナーは、42km地点のエイドを捨てることで何とかタイムをひねりだすことができる。71km地点用の荷物だけ預けて、トイレに向かう。

宿で2回、会場で1回。完璧だ。あまりにも完璧過ぎる。平時からおなかが弱く、常にOPPに悩まされている俺にとって、TM(トイレ・マネジメント)は死活問題だ。下痢止め界の勇、「ストッパ」をウエストポーチに仕込み、いざ出陣。

 

今回は、少し変わった布陣でのスタートとなる。まず、経験者であり、昨年の完走者でもある俺とプリンス海老澤は5:00スタートで19:00終了。それ以外の15人が5:20スタートで19:20終了となる。完走経験があるのは、シンジとゼッキーのパリピ2人組だけだ。

これは地味に痛い。おそらくほとんどのメンバーたちが、ゴール出来たとして俺と同じ数分前ゴールなると思われる。とすると、20分ぶん後ろに下がってまで俺が一緒に走るのは実力的に不可能だし、それが実力的にはできるプリンス海老澤(フル3時間20分切り)は、しかし強度のサイコパスだ。

集団の命は、シンジとゼッキーの「パリピーズ」に預けられることとなった。まぁ、もともとウルトラマラソンなんてものは、人に頼りながら走るもんじゃない。自分の足と頭と心で、自らの限界と向き合いながら、完走を目指すものだ。だからみんな、がんばれ。

そして、号砲が鳴った。14時間の戦いが始まる。

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1-10km

スタートしてしばらくは、プリンス海老澤と走ることになった。元サブ4ランナーとはいえ、直近のフルが4時間48分の俺と異なり、常に自己ベストをたたき出し続けるプリンス海老澤は、馬力が違う。気持ち悪いぐらい長い脚を回転させながら、スタスタと走っていく姿はすでにオーラを身にまとっている。

 

5kmまでは平坦な道が続く。今の俺は、正直キロ6分半でもキツイ。年明けから2か月に渡って寝込んできたダメージは思いのほかデカく、カラダの各所が弱っているのを感じている。この1.5カ月で250km強ほどを走ったが、そんな付け焼刃で回復するものでもない。

どこの力が使えて、どこが思い通りにならないのか。現有戦力を確認しながら、今日の作戦を反芻していく。出来もしない10時間切りとか、自己ベストとかはどうでもいい。とにかく完走だ。完走するためにだけ、すべてをつぎ込む。ほんの数分前でいいから、ゴールに駆け込む。そして、俺の完走はこの「AKBプランニング」に懸かっている。

 

7km地点から、少しずつ上りになっていく。序盤の序盤ではあるが、AKBプランニングをひたすら見る。ほんの10秒20秒の積み重ねが、最後の数分を生む。最初から細部にこだわることは、決して間違っていない。

ここで、最初の違和感を感じることとなった。カラダが重い。いや、これは比喩表現とかではなくて、実際に重い。去年は結構な練習を積み、ダイエットにも成功し、そして82kgでこのレース臨んだ。今年は寝込んだ上に味覚を失った反動で爆食が続き、一時は90kgに突入。そこから少しだけ絞って86kg。坂道の負担が半端ではない。

事実、俺は7kmから10kmに至るちょっとした坂道でも、すぐに歩いてしまうことになった。戦略的に足を休めるとか、そういうかっこいいことを言いたかったのだけれど、そうじゃない。単純に、ほんのちょっとの上り坂ですら、登れないカラダになっていた。これはヤバい。俺の中で、今日レースに黄信号が灯った瞬間だった。

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一緒に走っていたプリンス海老澤について、少し触れておこう。

プリンス海老澤は、よくトイレにいく。たった数時間のフルマラソンですら、3回ほどOPPに行く。そして聞いてもいないのに「いやー、こないだのフルは3時間19分でした!でもOPP3回行ったから実質は3時間切りがもう少しでした!」と報告してくる。

良い子のみんな、覚えておくといい。「実質」という言葉は、現代のマジックワードであり、パワーワードでもあり、そして同時に常に疑ってかかるべきものだ。そして同時に、この「実質」という頻繁に言葉を使ってくるヤツに対しても、警戒の念を持った方が良い。

 

たとえば携帯電話業界の「実質」。「端末料金実質無料!」のような言葉に踊らされ、顧客ロックを食らい、不便を強いられた経験はないだろうか。読んでも絶対に理解できない約款を持ち出され、不可思議なセット販売に面喰いながら、何がなんだかわからないままキャリアに大金を払っている消費者はとても多い。

また、不動産投資業界でも、利回りが低い物件を押し込んでいるだけなのに、「実質〇円の節税になります」と顧客に訴えているヘンテコな会社が非常に多い。節税額云々の前に、それ以上のキャッシュアウトが発生してるんだよ、と冷静な目で見ることが肝要である。

ゴルフ場に目を向けてみると、「実質パー」、「実質バーディ」とアピールしているおっさんは多い。大概は数mのパットを容赦してもらった結果で、ゴルフで最も難しい部分を回避していながら、しかし自身の実力は存分にアピールしているという珍現象が起きている。

このように、「実質」という言葉は危ない。そして、「実質」と連呼しているヤツも大体危ない。そして、そう、「実質」を連呼して自身のマラソンタイムをインフレさせているプリンス海老澤は、強度のサイコパスである。

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俺と走っているわずか10kmぐらいの間も、プリンス海老澤は数回トイレに行った。すでにこの日5回目ぐらいのうんこをしているようだ。

正直、開始10kmに満たない段階で息はぜぇぜぇと荒れ、ちょっとした上り坂ですらキツイ俺にとっては、大変ありがたい休憩だった。プリンス海老澤がトイレに行っている隙に、歩く。歩いていると、プリンス海老澤が再び追いついてくる。この繰り返しで少しずつ進むこととなった。

しかし、追いついてくるときのプリンス海老澤は、なぜか毎回サブ3(キロ4分強)ぐらいのペースで走ってくる。序盤には完全に不要なはずの猛烈スピードで追いかけてきて、「おーまたせしましたぁー!」と笑顔で走ってくるのだが、これがまた非常に苦痛なのであった。

「全然待ってねーよ!」

「はええよこのサイコパスが!」

「あんたの肛門どうなってんだよ!」

こんなことを思いながら走っていた。正直、10kmに満たずして、いろんなことに少しイラつきながら走っていたと思う。

 

今にして思う。他者にイラつくのは、自分に力がないからだ。

自分に十分な経済力があれば、他者がどんなに稼いでいたとしても、それにイライラすることはない。自分が十分に強ければ、肩がぶつかったりしてもムカつくことなどない。自分の家族がうまくいっていれば、山ちゃんと蒼井優の結婚記者会見に嫉妬することなどない。

俺がこの日イラついていたのは、自分の息がすぐに切れたからであり、上り坂が思うように登れなかったからであり、プリンス海老澤がトイレに行ってる間を利用してすぐ歩こうとするぐらい、実力がなかったからである。

今より強くなるには、今より強くなるしかない。こんな当たり前のことを、俺は分かっていなかったのかもしれない。もう遅いかもしれないが、できるだけのことはやろう。

 

10km地点に着いたのは、スタートから71分経過した頃。ほぼプラン通り。プラン通りじゃないのは、俺の体力だけだ。さて、どうなることやら。

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退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!!
我が生涯に一片の悔いなし!!!

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